Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


最期の夜月

第四十二章

海沿いでも寄りながら帰ろう…そう思った私は大分遠回りにはなるが、海沿いへと車を走らせる事にした。ほんの少し窓を開けていた事もあって、潮の香りがする。少しだけ波の音でも聞こう…そう思った私は車を停める事にした。波の音が心地良い…そう思い私は車を降り、防波堤へと上り煙草に火を点けた。…肇さん…凄く疲れちゃったんだろうなぁ…と彼の事を考え煙草を吸い続ている私が居た。どの位の時間ぼーっとしていたのかは分からない…日も暮れ始め、段々と暗くなる中、車から目を擦りながら肇さんが降りて来ていた。…「…美月さん…おはようございます…」とぼんやりとしているであろう頭で…「今って…朝…?」と私へと尋ねる彼がいた。…「ううん、まだ朝じゃないよ」と彼へと答えた。…「少し海に来てみたの」と彼へと伝えると…「わぁ、海…」と寝惚けた儘、彼も…「僕も美月さんのお隣良い…?」と尋ねてくれる彼がいた。…「勿論」私は彼へと伝え、彼もまたそんなに高くはない防波堤へと上り、私の隣へと座った。彼はブランケットを持った儘車から降りて来ていた様子でブランケットをふんわりと自分に纏いつつすっかりと見えなくなった海の方を見つめ、…「僕も煙草吸お」とジーパンのポケットから煙草を取り出し、吸い始めていた。彼は…「波の音…落ち着くね…」そう言って彼は煙草へと火を点けた。暗闇で彼を観察する事は出来なかったが、かろうじて見える煙草の灯りで直ぐに咥え煙草をしているであろう事が分かった。大分疲れているだろうと私は感じつつ、彼の世界へと行っているであろう時間を過ごして貰おうと思った次第である。15分位だろうか…彼は…「ねぇ、美月さん」と声を掛けてくれた。…「んー?どうしたの?」と聞き返した。彼の声は震えており、…「あのね…僕…リスカしたいよ…」…「今日、凄く疲れちゃったよね」そう伝えた後、…「肇さん?少し、リスカしたい腕、触らせてくれないかな?」…「あ、うん」そう答えた彼は包帯をしている腕を私の前に伸ばしてくれた。…「見えないよね…」そう言って、微かに見えていた腕に触れ…「ここだよね?合ってるかな…?」…「あ、うん…ここ」と言い、私の手を取りリスカしたい場所へと滑らせた。大分暗くなって来た中、私は彼の腕を摩りながら…「今は私が肇さんを大事にするから、ゆっくりで良い…肇さんが自分を大事に出来る様にして行こうね?きっと大丈夫だから…」と彼へと伝えると彼は泣いている様だった。…「ありがとう、美月さん…」と彼は震え声で、私へと一生懸命に伝えてくれているであろう事が分かる。…「辛かったよね…大丈夫だよ、ゆっくりゆっくり行こうね?」…「…うん…」そう小さく呟きながら、私の摩っている手の上に彼は手を乗せ、一緒に摩っていた。…「一緒に肇さん自身を大事にして行こうね?」と伝えた後、暫く彼と私の手が重なった儘彼の腕を摩る時間が過ぎて行く事になる。

#日記広場:自作小説

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2025/08/23 14:59
疲れた時に波の音 良いですね
リスカ しちゃダメとは言わず 寄り添う美月さんすてきだなあって思いました
時間に波に感情が溶けていくさまを見ているようですね
こういう時間って大切にしたいです



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