最期の夜月
- カテゴリ:自作小説
- 2025/08/27 01:47:05
第四十三章
すっかりと夜も更けて来た頃、少し肌寒くなって来た様に感じた私は…「肇さん?帰ろうか」と声を掛けた。…「うん…」そう答えてくれる彼の手は少し震えていた。
…ここからだと1時間程は掛かるであろう場所へと来てしまった。…「肇さん?寒いかな?」…「ううん…大丈夫…」そう言って彼は私の手から離れた。…「今日は凄く疲れたと思うから、家までゆっくり寝てたら良いよ」と伝えると彼は素直に…「うん…ありがとう、美月さん…」と返事をくれた。…「じゃあ、帰ろうか」と二人して防波堤から降り、…「肇さんは後部座席で寝てて」と彼を促すと、…「はぁーい」と素直な言葉が返って来る。私も車へと乗り込み、エンジンをかけた。もう一度確認を取る様に…「ねえ?肇さん?寒くない?暖房入れようか?」と聞くと…ぼんやりとした声で…「…ううん…大丈夫…」と言って寝てしまった様子だった。…さて、帰ろう…私は家へと向かうべく車を走らせ始めた。なるべく彼の身体に負担の無いように、ゆっくりと運転をし帰路へと着く。大分ゆっくりと走っていた為もあってか、帰宅の時間は1時間半程掛けて帰った次第である。車を停めると、肇さんも起きて来た様子で…「今…どこぉ…?」と小さく呟いていた。…「今、丁度マンションに着いたよ」そう伝えると、彼は目を擦りながら…「そっかぁ…」と身体を起こし、少しぼーっとしている様だった。…「身体、疲れてない?大丈夫?」と私が聞くと、彼は…「…んー…大丈夫ー」と寝惚けた様に答えていた。私は彼の負担をどうにか軽くしてあげたくて仕方が無かった。…「少し、煙草吸って部屋に戻ろうか」と彼を誘う。…「うん…そうするぅ…」と彼は言っていた。…「美月さんのお隣良い…?」と彼が聞く。…「勿論、大丈夫よ」と私は答え、彼は素直に「…ありがとう…美月さん…」と助手席へと移動してきた。「さ、一緒に吸ってから部屋に戻ろうか」とお互いに煙草へと火を点けた。車の中で2人の煙が絡み合う。…「美味しいね…煙草…」と声を発したのは彼の方からだった。…「そうだね」と彼の顔を見てにこやかに答えた。彼もまた、私を見つめながら「いつも通りの笑顔」で…「うん」と綺麗な顔で微笑んでいた。…少しは落ち付いてきたかな…と彼をそっと観察し始めた私だ。彼はゆっくりと煙を吸い込み、肺一杯に煙を飲み込む様に一度一呼吸置き、時間を掛けゆっくりと煙を吐き出した。…「ねぇ、美月さん?…僕、上手く新しいお家契約出来てたかなぁ?」と尋ねてくる彼は少し不安気な顔をしていた。…「肇さんは上手に契約出来てたよ、明日また改めて一緒に行ってちゃんと契約を済ませて来ようね」と彼へと伝えた。…「…何かできてなかったの?」…「ううん、ハンコ押して鍵を貰いに行くだけだよ、大丈夫、凄いよ肇さん…良く頑張ったね、偉い偉い」…「ありがとう、美月さん」と車の中での会話はあっという間に15分を超えようとしていた。…「さ、そろそろ部屋に戻ろうか」と彼に伝えると、意識がはっきりしてきた様に「うん!」と通常の肇さんの笑顔がそこには存在していた。
でも 気持ちのゆとりがないと ちょっとしたことでも本当に大変なのわかる気がします
精一杯頑張られたのでしょうね
そしてそれを理解して寄り添う美月さん
大人ってかっこいい!美しい!まるで二人は 波と月のよう
なんて思ってしまいました
そういえばタイトル気になります
伏線回収に来てるのでしょうか
紫月さんは色んな視点から表現されるのすごいなあっていつも思っています
暑さがまだ続きます
無理なさらずお過ごしくださいね