Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


最期の夜月

第四十四章

部屋へと戻った彼と私は、…「いつから入居できるんだろうね」と楽し気に笑う彼に、…「そうだね、早目に入居したいね」と不思議と私を笑顔にしてしまう彼だ。…良かった…いつも通りの彼に戻ってる…と安心した私がいた。…「肇さん?ちょっと辛い事かも知れないけど、バイトの事聞いても良いかな?」と尋ねると、彼は…「…うん、大丈夫、僕も向き合わなきゃ…」と精一杯に答えてくれた。…「バイトはどうなったのかな?」…「…あいつが他のお客さんや、バイトの皆にも迷惑掛けちゃったから、店長が間に入ってくれて…店長とあいつで話してくれたんだよね…」…「そっか、それで出禁にして貰ったの?」…「…それで僕、あいつがしつこいの知ってるから、後2日でバイトも辞めさせて貰う事になったよ…」と辛そうな顔をしていた。…「後2日も…大丈夫そう?元彼さん、しつこい様だけど…」と彼へと尋ねると、…「…正直分かんない…でもそんな直ぐに辞めるのも申し訳なかったし…もしかしたら明日辞めて来ちゃうかもしれない…」…「そっかそっか、それなら不動産の契約を私にし直しに行こうね、一緒に」と彼をどうしても一人にしておけなかった私はなるべく「一緒に」過ごして貰おうと必死だった。…「うん…ごめんなさい…美月さんにも迷惑掛けちゃって…」…「いーんだよ、だあーいじょーぶ」と笑ってみせた。…「ありがとう…美月さん…本当に…」泣いてしまいそうな程の震え声で彼は言葉にしてくれた。私は、咄嗟に彼を抱き締めて…「本当に大丈夫だから」と背中を摩っていた。彼もまた、私に縋りつく様に…「本当に…ごめんね…美月さん…」と泣いていた。…「大丈夫、大丈夫だから…」と彼の頭を撫で、落ち着いて貰いたくて彼を強く抱き締めた。彼もまた私に強くしがみ付いていた様に思う。…相当辛かっただろうに…「ごめんね?辛い事思い出させちゃったかな?」…「ううん…大丈夫だよ…」と彼は小さく呟いた。…「引っ越しが終わったら肇さん、メンタルクリニックにでも行ってみない?」と私は彼へと持ち掛けた。…「あぁ…成程…メンタルクリニックかぁ…行ってみようかな…」とすんなりと受け入れてくれた彼だ。…「そうだね…行ってみようと思う」と言ってくれた。…「ありがとね」と彼の髪をそっと撫でた。…「肇さんは今日お風呂入れそう?」と聞いてみると、…「今日は…僕は入れないかも…」と答えてくれた。…「そっかそっか、それじゃあもう寝る?」…「うーん…」と煙草に手が伸びていた彼は大切そうなジッポで火を点け、咥え煙草をし出した。…自分の世界へと行っていると分かった私は、…「肇さん?少しでも休もうか?出来るなら、今日カッター買ったでしょ?それも私に預けてくれないかな?」…「…そうだね、うん…そうする」と言って彼はトートバッグからカッターを私に預けてくれた。…「ありがとね」…「ううん…こちらこそだよ…美月さん、いつも僕の事大事にしてくれてありがとう…」…「全然だよ、ゆっくりで良いから肇さんも自分自身の事、大事にして行こうね」と伝えた。…「それじゃあ、肇さんはそろそろ寝ようか」…「うん…そうさせて貰っても良いかな?」…「勿論だよ」と答えると…「ちょっと着替えて来るね」と言って、寝室へと向かう彼を見つめながら、…「ゆっくり眠れると良いね」と声を掛けた。寝室から…「うん…」と彼の声を聞き、私はテーブルへと腰掛け、煙草を1本取り出し火を点けた。…「美月さぁん…僕この儘寝ちゃうかも」と寝室から声が聞こえた。…「眠れるなら寝ちゃって良いよー」と返事をし、時計を見ると22時半辺りになっていた。私は1本丸々吸った所で彼が寝ているかを確認しに寝室へと向かった。 

#日記広場:自作小説




Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.