最期の夜月
- カテゴリ:自作小説
- 2025/09/15 03:09:50
第四十六章
リビングへと来ていた肇さんはまだぼんやりとしている様に見えた。…「肇さん?今日凄い疲れちゃったよね」と声を掛けた。…「…うん」…「色々と頑張ったね、凄いよ、しっかり契約も出来ていたし」…「ほんと?」と聞く彼に笑顔で…「うん」と、答えた。ケトルで沸かしていたお湯も温まって来た様で…「白湯、入れちゃうね」と伝えると…「ありがとう、美月さん」とほんの少し柔く笑っている彼がいた。…「僕ね、思った事があるんだ…」私はマグカップへと白湯を入れながら聞く。…「美月さん、いつも僕の事大事にしてくれてるの分かるんだ…だから僕もちゃんと僕自身を大事にしなきゃなって思ったよ」入れ終わった白湯を持ってテーブルへと向かい、…「そっか、少しづつで良いんだよ、ゆっくり肇さんが自分自身を大事にしようと思ってくれた事、嬉しく思うよ」と彼へとマグカップを渡した。…「ありがとう、美月さん…いつも感謝してます」…「こちらこそ、そういう風に感じてくれてありがとう」…「さ、煙草でも吸おうか」と彼を誘う。…「うん、美月さんと煙草吸う…」彼は着替え終わった服のポケットから煙草とジッポを取り出し、火を点けた。それを見届けて私も煙草へと火を点け、大きく煙を吸い込み吐き出した。ゆっくりとした煙まみれの時間が私にはとても心地良かった。…「肇さんは今日お風呂入っちゃう?」と私は何となく聞いてみる事にした。…「あー…どうしようかな…でも美月さんが寝てる時にガチャガチャしてもあれだし…」と言葉を濁した。…「私は大丈夫だけど、シャワーだけでもサッパリして来たらどうかな?」と彼に伝えてみた。…「煩くないかな…?」と彼は私へと尋ねた。…「私は大丈夫よ、もしかしたら先に寝ちゃってるかも知れないし」と彼へとにこやかに返事をした。…「そっか、それじゃあ美月さんの事起こさない様にシャワー入っちゃおうかな」と彼もにこやかに私へと言葉を紡いでいた。…「それじゃあ、パパっとシャワー入っちゃおうかな」といつも通りの笑顔に戻って来ていた彼はそう言っていた。…「うん、行っておいで」と私は彼をシャワーへと促す様に言った。…「私はスキンケアでもしちゃうね」そう伝え、また煙草へと手が伸びていた。…「うん!美月さん、寝ちゃってても大丈夫だからね?」とにこやかに笑う彼は相変わらず美しかった。…「ありがとう、これ吸ったらスキンケアして寝てみるね?」…「うん!もしかしたら美月さん起きてる間に上がってこれるかな?分かんないけど」と私へと言葉を少しづつ紡いでくれる彼が愛おしくて堪らなくなってしまった私だ。…「よし!僕もサッパリしてくる!」と元気を取り戻しつつある様に見えた彼は…「シャワー行ってきます!」とバスルームへと向かって行った。私は吸い終わりそうな煙草の煙を見つめながら…肇さんは辛く抱えている事が多いのかもしれないな…とふんわりと彼の事を考えそして耽る。…そうだ、スキンケアしなきゃ…私は吸い終わった煙草を消し、寝室へと向かった。寝室へと来た私はドレッサーへと座る前に、煙草、灰皿、香水、白湯等を準備してスキンケアへと集中していく。…さて、明日はどんな1日になるかな…と思いながらスキンケアをし、煙草を吸いながらゆっくりと呼吸をした。スキンケアも終わる頃、肇さんは濡れた髪で寝室へと戻って来ていた。…「早かったね」…「うん!サッパリして来たよ!」と笑顔で言う彼に、…「それは良かった」と私迄笑顔にさせてしまう彼の魅力に引き込まれて行く。…「ドライヤーここにあるから、私先に横になっちゃうね」と彼へと伝え、…「あ、うん…煩くない?平気…?」と不安気に小さな声で私へと問う。…「大丈夫よ、ゆっくりで良いから髪の毛ちゃんと乾かして寝てね?」と私はベッドへと横になった。その後の記憶が無い程に私はすっかりと眠りに落ちて行った。