夢オチ
- カテゴリ:恋愛
- 2025/11/28 20:00:05
我が国は恐れていたパンデミックの脅威に再び襲われる事となった。
病院は患者であふれ返り、医療従事者の疲労は頂点を極めた。
そんな中、本来は就く事の出来ない医療の現場に、少しでも労力を補充しようと介護職員の登用が認められることとなった
そんな中、私の所にも市内の大きな病院から、現場での勤務の依頼があったのだ。
現場は惨憺たる状況だった。
看護師たちは疲れた顔で、それでも駆けずり回るような動きで処置に当たっていた。
私は右も左もわからぬまま、そんな現場に放り出された。
一緒に働く看護師の名前も知らないまま、ナースシューズではなくスニーカーを履き、白衣ではなくジャージ姿の私がそこにいた。
とりあえず何かしなきゃ、と患者の顔を見て回る。
「あの、そこの看護師さん!この方喉が渇いてる様だけど、座位は保てる?」
「あ、無理です、寝たまま水差しでお願いします」
「ホイきた!」
「あの、こちらはトイレだって!要車椅子?」
「あ、手引きで大丈夫です!」
「よっしゃ!」
ようやく一息がつける時間。
先ほどの看護師と雑談。
「あの、えっとー?」
「あ、申し遅れた、拙者招き猫と申す」
「招きさん、やりますねぇ、助かりますよ。感染は大丈夫なんすか?」
「ウム、ワシはほれ、スーパーサイヤ人だから(笑)」
「髪の毛黄色くないじゃん」
「黄色くなるモノが無いのじゃ!」
束の間の休息の後、再び現場に戻る。
患者全員のバイタルを計る。
「バイタルのリストはどこへ?」
「あ、あそこに看護師長がいるので、渡してきてください」
「はぁい」
「あの、師長殿ですか?バイタルをお持ちしました」
看護師長が振り向く。
懐かしい笑顔。
そこにはあの頃のままの、ひまわりの姿があった。
涙があふれてくる。
「あんた、お疲れ様」
やっと、ようやく、初めて、君と仕事ができたな。
夢の中、だとしても、だ。





























