エリシャとエリヤ最終章
- カテゴリ:日記
- 2025/12/03 01:25:41
エリヤといえばイエスキリストの雛型と呼ばれていてイエスより先に
携挙(神によって天に生きたまま上げられる)された人物です。
でも実在の人物だとしたら、現実は違っていたかもしれません。
妄想炸裂で書いてみました。
エリヤの活躍で、インチキ預言者たちと愚王はあの出来事の後、自業自得で
悲惨な最期を遂げました。
しかしエリヤはマイペースな男でした。
世間に翻弄されることなく、あの後も熱心に自然科学の研究にのめり込んでいました。
愚王の界隈ではエリヤを逆恨みする者も多く、引き続きヨルダン川のほとりで身を隠さざるを
得なかったのですが、その間、何もしていないわけがなく、エリヤは
ついに誰も成し遂げたことのないある実験を行うことを決心したのです。
「エリヤ本当に行ってしまわれるのですか?」
「ああ、あの赤い嵐を調べたくてね。あの土地を不毛な砂漠から緑の大地に
変える方法が見つかれば、多くの人々を救う事が出来る。」
ヨルダンは鉄分の多い赤い砂で覆われた乾燥した土地です。
そして時折吹き荒れる赤い砂の嵐が恐ろしい熱風を伴って人々を死に至らしめて
いたのです。
それは現代でも重病の呼吸器疾患を引き起こしています。
「エリシャ、これから私がする事は誰に聞かれても黙っていなさい。」
あまりにも無謀な実験で、これを聞いたら誰でも引き留めてしまう恐れが
ありました。
エリヤはなんとあの赤い嵐の中に突入して自分自身で人体実験を行う事にした
のです。
赤い嵐が吹き荒れても無傷で過ごす方法が見つかれば、人々が嵐の間、おびえて
家屋に隠れていなくても済みます。
もう恐怖に苦しむこともないのです。
そして、悪魔の赤い嵐だと思わずに、ただの自然現象だと知って対策をとることが
出来るかもしれないのです。
エリヤは危険な実験に愛弟子を巻き込みたくなかったのですが、エリシャは
死ぬときも一緒だと決めていました。
頑固なエリシャはエリヤも手を焼くほどで、来るなと言っても言う事を聞きそうに
ありませんでした。
2人は赤い嵐がもうすぐ来ると噂で聞いて、早速ヨルダン砂漠に向かいました。
「エリシャ、怖いか?いいか私がするように真似しなさい。」
エリヤはヨルダン川のほとりまで進み、川の水にたっぷりと外套を浸しました。
そして、2人は赤い嵐が来る砂漠の中に立ち、その時を待ちました。
あの悪魔のような赤い嵐がやってきました。
もうもうと砂を巻き上げ、呼吸をした瞬間に死ぬのは間違いないのです。
この嵐はあらゆるものを一瞬で乾燥させ、瞬く間にミイラにしてしまいます。
視界は遮られ、昼間なのに夜のようです。
「エリヤ、エリヤ・・・」
「大丈夫、この外套の水分が私たちを守ってくれる。」
しかし、この実験に耐えられるような装備は当時の人々には、今でもそうですが
無理でした。
いくらエリヤが麻や羊毛の分厚いコートを滴るほどたっぷり水に浸したとしても
熱風には耐えられ無かったのです。
「エリヤーッ」
エリシャの声なき声が砂漠に響きました。
エリヤはエリシャのために、万が一のシェルターを造営していました。
エリシャはエリヤの外套をつかんでシェルターに逃げ込んだのでした。
逃げ込んだはずでした・・・
確かに逃げ込んだのです。
しかし石で出来ているはずのシェルターのドアは猛烈な熱風で吹き飛んでいました。
エリヤはエリシャを抱きしめていました。エリシャも少しでも力を抜くと
吹き飛ばされるとエリヤの外套を必死で掴んでいました。
そして悪魔の赤い嵐が過ぎ去ったとき・・・
エリシャはエリヤの外套の裾を強い力で握りしめていました。
でも、外套の裾の先にはエリヤの姿は無かったのです。
「エリヤーッ、エリヤーッ、エリヤーッ どうか応えてください
どうか、どうかお願いだから・・・エリヤ置いていかないで・・・」
「エリヤ、帰ってきてお願いだから・・・」
「嫌だーッ、嫌だよエリヤ、そんなの、そんなの・・・」
エリシャの叫びだけが空しく砂漠の空に響き渡りました。
そして数年後、北イスラエル中に名声が轟く偉大な預言者が誕生しました。
彼は彼の国の人々が再び病気と飢饉で苦しむ中、大勢の命を救ったのでした。
けれど、彼はなぜかいつもむっつりとしていて暗く笑わない男として有名だった
のでした。
Fin





























