嘘の陰影
- カテゴリ:自作小説
- 2025/12/21 10:26:26
第三章
…「少し話してくか」そう切り出したのは彼の方からだった。…「優美はまだ煙草吸ってるか?」…「うん、でも今持ってないや」そう言うと、彼は…「俺の1本どうよ?」と笑って煙草を見せてくれた。…「あはは、ありがと、それじゃあ1本貰おかな」と私まで笑いへと誘う彼に懐かしさと安堵感を覚えた。喫煙所へと一緒に向かいながら、…「優美はどの辺に住んでんの?」と聞かれ、…「このスーパーから歩きで15分程度の距離に住んでるよ」と答えた。…「えーマジ?すげー近いじゃん…羨ましいー」と少し笑っている様にも見えた。…「この辺りってすげー田舎じゃん?」…「うん」…「だから俺このスーパー見付けんのに車で30分は掛かったぜ、ははは」と大きく笑っていた。喫煙所へと着いた私達は、少しぼーっとする様にほんの数秒、沈黙になった。彼は…「ほい」と煙草を1本私へと手渡してくれた。…「あ、ありがと」と受け取った私に続けてライターを渡してくれる。私はそれを受け取り、煙草を咥えカチッと火を点けた。煙草に火が付いたのを確認しつつ、ライターを彼へと返し煙を吸い込んだ。彼もまた同様に煙草へと火を点け、吸い始めていた。…「俺さ、離婚したんだよ」…「え?いつ?」と聞き返すと、…「半年くらい前?になるかな」…「え…凄い最近じゃん」と私が言うと、…「だから、心機一転?引っ越したって訳」…「なるほどね」…「仕事も変えたの?」…「おーこの辺りじゃねーけど一応転職もしたな」二人の煙が混ざり合う。彼からはまだ靄の様な黒い影の様な物は出ていない。今の所全て本当の事なのだろう。…「何で離婚しちゃったの」と聞く私に彼は笑いながら…「浮気されたんだよな…ははは」と笑っていた。ほんの少し、黒い靄の様な物が一瞬見えた気がした。…きっと、笑ってる事が嘘なのだろう…私は…「ごめん、辛かったよね…絶対」…彼は真剣な顔をして…「ん…まぁ…最初の頃はな…」と少し辛そうな顔をしていた。…「佑真、明日仕事休み?」と私は彼の辛さを吐き出させようとする事にした。…「お?おう…どしたよ」…「私の家で色々話そう」そう彼へと伝えるときょとんとしていた彼は一瞬クスッと笑い、…「相変わらずだな、優美…ははは」…「相変わらず何よ」と私は少しムッとした顔をした。…「優美はやさしーっつー事だよ…怒んなって…ははは」と笑っていた。…「そんな事ないと思うけど…」と小さく呟いた。…「あ、でも買い出し行かなきゃ」…「そんなんいつまでも待ってるって」と彼は言ってくれていた。…「ちゃちゃっと買い出ししてくるから、どこで待ってる?」と私が彼に問うと、…「車で待ってるぜ」と言い、…「連絡先、変わってねーよな?」と私へと聞いてくれた。…「うん、変わってない」…「んじゃ、買い出し終わったら連絡して」と彼は車の方へと歩いて行っていた。…「分かったー後でねー」と私は彼にだけ届く様な声で後で会う約束をした。…「おー後でなー」と手をひらひらとさせている彼の後姿はほんの少し悲し気に見えた。



























