Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


嘘の陰影

第七章

二人して煙草に火を点け、彼は少しづつ離婚へと至った経緯を話し始めてくれた。…「結婚して3年目の時かな…嫁…元嫁か…帰って来るのが遅くなり始めたんだよな」…「俺は仲良く過ごしてたつもりだったんだけどな…土日には必ず元嫁と出掛けてたし…でもそれは俺だけの考えだったんかも知れん」…「浮気現場を目撃したの?」…「そー…仕事帰りに元嫁と知らねぇ男がラブホ入ってくの見ちゃってさ…」…「俺、動揺しちまってさ…最初はマジか…って思ったんだよな」…「でも、最近帰り遅ぇし、そーゆー事かって何か冷静に考えられる様になってな」…「ラブホに入って行ったのを最初に見た時は許せねぇって思ったけど…何か…なんつーかさ、俺が悪かったんじゃねーかなって思うようになって」…「そんな事絶対ないじゃん!佑真は悪くなんてないよ!」と私は少し荒びた声を発してしまった。…「優美、さんきゅーな」…私は首を横に振り…「全然だよ」と答えた。…「そっから1年は元嫁朝帰りも増えてさ…もう無理だなって思って、離婚する事になったんよ」…「佑真…辛かったね…」…「ん…まぁな…」…「まぁ、元嫁の連絡先も、もう知らねぇし何処でどう暮らしてんのかも知らねぇ…少しは気が楽になって来てる」…「そっか…あのお嫁さんがそんな事する人だったなんてね…」…「まぁ、人っていつ変わるか分かんねーし、段々変わっていくんじゃねーの、俺には分からん事だけどな…」…「佑真は変わってないよね、良い意味だよ?」…「そうか?」…「佑真は嘘吐かない優しい人だよ」…「ありがとな、優美」…「まぁ、そんなこんなで離婚した訳よ」…「結婚式に来てくれた皆に申し訳ねぇなと思ってる」…「そんな風に考えちゃう佑真が優しいんだよ」…「そうなんか…ありがとな」一頻り彼の辛い過去を聞いた私は…「煙草もう1本良い?」と聞くと、…「いくらでも吸ってくれ」と答えてくれた。…「ありがと」そう返事をし煙草を吸う事にした私だ。…佑真からは一切靄は見えていなかった。全て本当の事なのだろう。…辛かっただろうに…私は煙草を吸いながら彼の心の痛みを感じざるを得なかった。

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