嘘の陰影
- カテゴリ:自作小説
- 2025/12/31 01:42:06
第八章
佑真の過去を聞いて心が痛くなった私だったが、佑真は前を向こうとしている。応援してあげたい…そんな風に思い始めた私だ。…「ねぇ、佑真?」…「ん?」…「今好きな人とかいないの?」…「いねぇよ」と笑いながら言う彼が痛々しくも見えた。そして唐突に…「俺さ、初恋が優美だったんだわ」…「…え?」と私は同じ気持ちだったんだと驚きを隠せなかった。…「それ、本当?」今の所、靄は見えてはいない。…「おう」…「あのね、佑真…実は私の初恋も佑真だったの」と素直に伝えてみた。…「マジか…」…「うん」二人の煙草の煙と共にお互いに思い合っていた事を伝え合った後、彼は意外な言葉を口にした。…「優美、お互いに初恋同士…恋愛してみねぇ?」…「え?」…「私なんかで良いの?」…「優美が良いんだよ」とにこやかに笑う彼に安堵感と胸の高鳴りを覚えた。…「あ…う、うん」動揺を隠せずどもり気味に答えた私に…「優美、動揺し過ぎ、ははは」と笑われてしまう始末だ。…「…そんなの動揺するに決まってるじゃん!」とムッとした私だ。…「まぁ、そりゃそーか」と納得してくれた彼がいた。ほんの少しの間(ま)が出来た二人の時間に、口を開いたのは彼の方だった。彼は真面目な顔をして…「優美…恋人っぽい事してみるか…」…「え…どんな事?」と聞き返した私に彼は…「…ハグしても良いか…?」と時計の音が大きく聞こえる程に静かな時間が流れていた。…「…う、うん…」彼は私の隣に座り直し、…「優美…こっち向いて…」緊張で彼の方を向く事が出来なかった私に彼は言う。彼の言う通りに彼の方を向き、お互いに向かい合った所で彼は再度確認を取り、…「ハグするな?」…「うん」私は彼の腕の中に包まれた。ほんの少し甘い香りを纏った彼の香水の香りがする。…「佑真…良い香りする、ほんのり甘い…」と私も彼の背中に腕を回した。…「優美も良い香りするぜ…落ち着く」とほんの少し震えていた彼の腕に…大胆な事言ってるのに、緊張してるのは同じなんだ…と安心感を覚えた私だ。二人の間にこんなに真剣な時間が今迄あっただろうか…初めての事だと思う時間はやけに時計の音だけが大きく響いていた。彼は、私を抱き締めていた腕を離し、向き合う様に私の顔を見て…「…キス、しても良いか?」と私の頬に手を当て、優しく摩ってくれた。真剣な彼の顔を見て、私は…「う、うん…」と答えると、彼はそっと私にキスをした。…「なんか…凄く変な感じ…」そう私が言うと…「照れるな…」…「ほんと、それね…ふふふ」とお互いに笑い合いながら、少しおちゃらけながら彼は…「優美は今日から俺の恋人です」と爽やかに言い放った。私は嬉しくも恥ずかしさも帯びつつ、…「なぁに、その宣言」とお互いに笑い合った。





























