Nicotto Town



灰色の境界線

視界は すべてミルク色の闇に溶け
世界から 輪郭という輪郭が 剥がれ落ちていた
防波堤に腰を下ろせば 冷えた湿り気が
安物のコートを 容赦なく重くする。
ボーッ、と。
目蓋の裏まで 震わせるような 低い霧笛。
それは どこかへ向かう船の合図か
それとも 帰る場所をなくした 男の独り言か。
海は見えない。
ただ 足元で波が 岸壁を噛む音だけが
ここが 陸(おか)の終わりであることを 教えてくれる。
俺は ポケットの中で 拳を固める。
ここには 過去も未来も 存在しない。
ただ 湿った風と 絶え間ない霧笛の反芻。
「さよなら」さえ 霧に吸い込まれてゆく。
俺は ゆっくりと立ち上がり
音の消えた 灰色の街へと 背を向けた。

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