Nicotto Town



通過待ちの孤独

錆びたベンチが、冷えた鉄の匂いをさせていた。
蛍光灯は、神経質な瞬きを繰り返し
誰もいないホームを、青白く、不健康に照らしている。
時刻表には、もうどこへも向かわない数字が並んでいる。
約束も、後悔も、定刻通りにここを通り過ぎていった。
残されたのは、自動販売機の唸る音と
足元を這うように流れる、湿った風だけだ。
俺は、剥がれかけたポスターの裏側を眺める。
そこには、かつて誰かが信じた輝かしい未来の残骸が
糊の跡となって、無残にこびりついていた。
遠くの闇から、不意に線路が鳴り始める。
それは迎えの列車ではなく、ただの回送車だ。
光の塊が、俺の孤独を一度だけ強烈に暴き立て
そして、何事もなかったかのように 闇の向こうへ消えてゆく。
俺は、冷えきった指先をコートの奥へ隠した。
次の始発が来るまで、この場所は俺だけの聖域だ。
「待つ」という行為だけが、俺に残された 唯一の仕事だった。

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