Nicotto Town



凍りついた光

空には 剃刀のような月。
その鋭い光が ビルの壁を 無造作に削り取っている。
星たちは 都会の煤にまみれながら
助けを呼ぶことも忘れ ただ 黙り込んでいた。
俺は 古いジャズが流れる ダイナーの窓際で
冷めたコーヒーに 一粒の角砂糖を落とす。
溶けてゆく白が 誰かの誠実さのように
あっけなく 黒い苦みのなかへ消えた。
誰もが 「永遠」なんて言葉を 信じたがるが
今夜の月を見れば それが嘘だとわかる。
光に照らされるのは ひび割れた舗道と
行き場のない 俺の長い影だけだ。
余計な言葉はいらない。
時計の秒針が 一歩ずつ 過去を切り捨ててゆく音。
それだけが この夜の唯一の 誠実な足音だった。
俺は 襟を立てて 店の外へ出る。
背中に突き刺さる 星たちの冷ややかな視線を
煙草の煙で 静かに塗りつぶしながら。

#日記広場:日記




Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.