Nicotto Town ニコッとタウン

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再会

波止場の隅、灯りの落ちかけた酒場。
曇った硝子窓の向こうに、あの横顔があった。
歳月は、彼女の瞳からあどけなさを奪い、
代わりに、消せない煙草の煙のような影を落としている。
扉を開ける。
潮の香りと、安っぽい香水の匂いが混じり合う。
「……生きてたのね」
「死に損なっただけだ」
グラスの中で氷が痩せていく。
語るべき言葉は、とうの昔に海へ捨ててきた。
重ねた時間は戻らない。
ただ、雨音だけが二人の沈黙を埋めていた。
「もう行くの?」
「……船が出る」
彼女は答えず、ただ赤く縁取られた唇で微笑んだ。
それは、かつて俺を地獄へ突き落とした、あの日の笑顔と同じだった。
俺はコートの襟を立て、雨の中へと戻る。
背中に刺さる彼女の視線を、冷たい夜風が切り裂いていった。

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