Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



街を洗う雨はあがったが
湿った風はまだ、
誰かの言い訳のようにまとわりつく。
火をつけたばかりの煙草を
指に挟んだまま
俺は角を曲がる。
コートの襟を立てるのは
寒さを凌ぐためじゃない。
そこに隠した、
戻ることのない過去を
風にさらわれないためだ。
「答えなら、風に吹かれている」
昔の男がそう歌ったらしいが、
吹き抜けるのは、
砂混じりの孤独と、
安物のバーボンの匂いだけ。
問いかける相手はもういない。
足元を転がる空き缶が、
乾いた音を立てて闇に消える。
俺は煙を吐き出し、
足早に夜へと溶け込んでいく。
風が背中を叩く。
それは、行けという合図か。
それとも、
すべてを忘れろという、拒絶か。

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