Nicotto Town ニコッとタウン

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心の旅路

また、逃げた。
夜明けの、鉛色の空を背負って、
ぼくは無目的の切符をポケットに突っ込む。
「どこへ行くのか」なんて、聞かないでほしい。
誰もいない場所、なんて、
この世のどこを探したってないのだから。
ただ、いまいる場所が、ひどく息苦しいだけ。
停車場のベンチで、
安っぽい煙草の煙を吐き出しながら、
ぼくはまた、自分の醜い過去を愛撫する。
あぁ、恥ずかしい。
あの時の言葉、あの時の顔、あの時の、甘ったれた涙。
全部、ぼくの宝物で、
全部、ぼくを殺す毒のようだ。
この旅は、帰る場所を探す旅ではない。
そう、
ただ、旅をしている「フリ」をして、
消えてしまいたいだけの、
道化の散歩だ。
車窓に映る、やつれた男。
ああ、あいつは、なんてひどい顔をしているんだ。
でも、不思議と憎めない。
不器用で、卑怯で、それでいて幸福を、
死ぬほど怖がっている、ひねくれ者。
「生きていていいよ」なんて、誰も言わない。
だから、ぼくが言おう。
「生きていて、すまないね」
列車は、さらに暗いトンネルへ突っ込んでいく。
光なんて、いらない。
ただ、このまま、
心地よい沈黙に、埋もれていたいだけなのだ。

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