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亡霊の帰還 — 霧笛に消えるマイルストーン


十数年ぶりの駅に降り立てば、
湿ったが、懐かしい絶望の匂いを運んできた。
視界を塞ぐ白濁の向こう、
かつての賑わいは、湿気たマッチ箱のように崩れている。
ニーナの声が、どこか遠くの記憶から響く。
「帰っておいで」と囁くのか、
それとも「二度と戻るな」と突き放すのか。
遠く、沖合で鳴り響く霧笛
それは迷える船を導く声ではなく、
この寂れた街が吐き出した、最後の溜息のようだった。
剥げかけた看板、閉ざされたシャッター、
街灯の下で蠢く、影のない記憶。
俺のブーツが踏みしめる砂利の音だけが、
この死に体(てい)の街に、生きている証を刻んでいく。
「ただいま」なんて言葉は、霧の中に捨ててきた。
バーボンの代わりに、喉を焼くのは冷たい潮風。
俺は襟を立て、二度と開かない扉の前を通り過ぎる。
霧笛がまたひとつ、
俺の過去を深い海の底へと、押し戻していった。_

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