Nicotto Town ニコッとタウン

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呪縛の再会 — 琥珀色の沈黙 —

霧のヴェールを裂いて現れたのは、
かつて俺がこの街に置いてきた、最大の後悔だった。
角のバー「マホガニー」の止まり木。
彼女は、まるで時間がそこで凍りついたかのように、
琥珀色のグラスを指で弄(いじ)っている。
背後で流れるのは、ニーナの執拗なまでの愛の呪文。
「お前に魔法をかけてやった(I Put a Spell on You)……」
「生きていたのね」
振り返りもせず、彼女が放った言葉は霧笛よりも鋭く、
俺の胸の奥、古びた防波堤を打ち砕いた。
再会の喜びなんてものは、安いパルプフィクションの中だけだ。
現実は、湿った煙草の火がつかないもどかしさと、
互いの空白を埋められない沈黙があるだけ。
「この街は、出口のない迷路よ。あなたも、私も」
彼女の瞳に宿る、冷たい情熱。
ニーナの歌声が、叫びとなって狭い店内に満ちていく。
それは愛という名の、解けない呪い。
俺は黙って隣に座り、バーテンダーに指を二本立てた。
外はまだ深い霧。
街全体が、ニーナの声に抱かれながら、
ゆっくりと底なしの眠りへと沈んでいくようだった。_

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