Nicotto Town ニコッとタウン

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存在しないアボカドの不在証明

日曜日の正午、太陽は無慈悲なスポットライトだ。
逃げ込んだダイナーの隅で、私はパンケーキを待っていた。
だが、運ばれてきたのは皿の上に乗った「かつての友」という名の厄介な不条理だった。
「なあ、お前はアボカドの沈黙を聴いたことがあるか?」
奴は椅子を引くこともなく、最初からそこにいたかのような顔で座っている。
かつては大企業の金庫番、今は虚空で「円」を描いていた。
「……アボカド? 私は今、メープルシロップのことしか考えていない」
「それがお前の弱点だ。シロップは甘いが、事象の地平線は常に塩辛い」
奴の声は、古びたラジオのノイズのように私の思考を浸食する。
哲学を通り越し、言語が裏返り始めた証拠だ。
あの日、共に組織を裏切った時の冷徹な判断力はどこへ消えたのか。
「いいか、昨日の夜、俺は自分の影とジャンケンをした。俺はグー、影は『無』を出した」
「……影の勝ちか?」
「いや、判定は保留だ。レフェリーの猫が、概念の向こう側に消えちまったからな」
私はゆっくりとナイフを置き、奴の目を見つめた。
そこには狂気すらなく、ただ広大な、何もない砂漠が広がっている。
沈黙は美徳だが、奴の沈黙には妙な「色」がついていた。
「お前は何を求めてここに来た。金か? それとも過去の清算か?」
「俺は、火曜日に予約したはずの『昨日の記憶』を探している」
奴は真剣な顔で、私のコーヒーカップに角砂糖の代わりに「消しゴム」を落とした。
「これが溶けたら、世界は未完成のまま完成する。……あばよ」
奴は風も立てずに立ち上がり、入口ではない、ただの壁に向かって歩いていった。
そして、そこに扉があるかのように自然に消えた_
残されたのは、真っ黒なコーヒーの中に沈む消しゴムと、
結局運ばれてくることのなかったパンケーキの予感だけ。
私はため息をつき、ウェイターを呼ぼうとして止めた。
きっと今の私は、存在しないウェイターに、存在しないメニューを注文しようとしている。
「休日を返せ……」
呟きは、不条理な太陽の光に溶けて、
二度と戻らない意味の向こう側へと消えていっ_。

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