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陽炎の断片4

蒼い残像
五月の夜は、生ぬるい風がネオンの海をかき混ぜる。
陽炎はアスファルトの熱を抱いたまま、
夜の底で死に損ねた幽霊のように、まだ揺らめいている。
カクテルグラスの縁で踊る光は、
誰かがついた嘘の数だけ、余計に眩しく見えた。
街は眠ることを忘れ、贅沢な孤独を売り捌いている。
ビルの隙間に張り付いた影だけが、
俺がここにいる唯一の証拠だ。
飲み込んだ酒の苦みと、深夜二時の静寂。
それ以上に確かなものなんて、この街には転がっていない。
追いかけた真実なんて、しょせんは夜の陽炎だ。
ヘッドライトの光に透かされ、
追い越したタクシーの排気音に、呆気なく掻き消される。
すり減った革靴の響きと、
指先に残った、かつての温もりの記憶。
それが、この夜に俺が手に入れた「空っぽ」の中身だ。
風が変われば、ネオンの文字が一度だけ滲む。
その一瞬の闇の中で、
俺は、自分自身の名前さえも忘れることにした。
五月陽炎。
夜明けが来れば、この街のざわめきも、
昨夜の過ちも、すべては乾いた朝日に溶けて消えるだろう。
_Fais de beaux reves_

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