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陽炎の街 2

陽が落ちても
路地裏に溜まった熱は 俺の足首にまとわりつく
それは死んだ女の 未練のようでもあった
「探さないでと言ったはずよ」
耳元で蘇る声さえ 夜気の中で歪んでいく
陽炎は消えたはずなのに
私の視界は いまだに定まらない
突き当たりの廃ビル
錆びた非常階段を上れば
生ぬるい風が ネクタイを弄んだ
地上を見下ろせば 街灯の列が
血の通わない血管のように這い回っている
ポケットの中で 冷えた真鍮の鍵が指に触れた
あの日 陽炎の中に消えた真実が
この鍵ひとつで 暴かれるというのか
「……あいにくだが、俺は嘘に慣れすぎている」
夜が明けるまで まだ時間はたっぷりある
陽炎の正体を見極めるには
ちょうどいい暗闇だ_
鍵が回ったのは、駅の片隅にある、忘れ去られたような小さなロッカーだった。
重い扉を開けると、そこには血生臭い記録も、裏金の束もなかった。
あったのは、使い古された一眼レフカメラと、一通の封筒。
中には、あの日、陽炎が一番激しく揺れていた海辺で撮った、一枚のモノクロ写真。
「……馬鹿な女だ」
写真の中の彼女は、眩しそうに目を細めて笑っている。
その背景で揺れる景色は、今夜の俺の視界と同じようにひどく歪んでいた。
封筒の底には、走り書きのメモ。
『これを見ているということは、あなたはまだ、あの街の熱の中にいるのね』
彼女が守ろうとしたのは、組織の秘密ではなく、
俺の中にわずかに残っていた「人間としての体温」だったのかもしれない。
ただ、この写真に焼き付いた陽炎が、胸の奥でいつまでも消えずに揺れている_
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