似非の正義
- カテゴリ:日記
- 2026/05/10 21:42:48
雨の舗道に、安い正義が溢れている。
奴らは高い演台に立ち、抜き身の言葉を振りかぶる。
その切っ先が、誰の血を求めるのかも知らずに。
奴らは高い演台に立ち、抜き身の言葉を振りかぶる。
その切っ先が、誰の血を求めるのかも知らずに。
「正解」という名の、錆びついたドス。
それを大上段に構え、振り下ろす。
返り血を浴びぬよう、安全な画面の裏側で。
それを大上段に構え、振り下ろす。
返り血を浴びぬよう、安全な画面の裏側で。
俺はバーボンを口に含み、
その茶番を、ただの雑音として飲み下す。
真実ってやつは、そんな綺麗な形はしていない。
もっと泥にまみれ、声も出せず、
路地裏で静かに冷たくなっているものだ。
その茶番を、ただの雑音として飲み下す。
真実ってやつは、そんな綺麗な形はしていない。
もっと泥にまみれ、声も出せず、
路地裏で静かに冷たくなっているものだ。
振りかざされた「似非の正義」が風を切る。
空疎な音が、夜の静寂を汚していく。
俺に必要なのは、振り上げる剣じゃない。
冷え切った指を温める、一杯の毒。
それと、自分だけが知っている小さな嘘だ。
空疎な音が、夜の静寂を汚していく。
俺に必要なのは、振り上げる剣じゃない。
冷え切った指を温める、一杯の毒。
それと、自分だけが知っている小さな嘘だ。
夜が明ける頃には、奴らの正義もゴミと一緒に回収されるだろう。
後に残るのは、誰にも届かなかった叫びと、
飲み干されたグラスの底の、わずかな沈殿物だけだ。
後に残るのは、誰にも届かなかった叫びと、
飲み干されたグラスの底の、わずかな沈殿物だけだ。
奴らの正義に、乾杯。
店の扉が開き、濡れたコートの男が入ってくる。
奴の目には、先刻まで演台で叫んでいた「正義」の残光が、まだ浅ましく宿っていた。
奴の目には、先刻まで演台で叫んでいた「正義」の残光が、まだ浅ましく宿っていた。
「あんたも聞いたろ。あの崇高な演説を」
男は隣の席に座り、同意を求めるように俺の横顔を覗き込む。
その口から漏れるのは、借り物の言葉で作られた薄っぺらな熱気だ。
俺は答えず、ただ氷を回す。グラスの中でカランと、誰かの良心が砕けるような音がした。
その口から漏れるのは、借り物の言葉で作られた薄っぺらな熱気だ。
俺は答えず、ただ氷を回す。グラスの中でカランと、誰かの良心が砕けるような音がした。
「ああ、聞こえたよ。耳が腐るほどにな」
男の顔から余裕が消える。
奴らが振りかざす正義の刃は、自分に向けられることを想定していない。
大上段に構えれば構えるほど、その懐はガラ空きだということに、この手合は一生気づかない。
奴らが振りかざす正義の刃は、自分に向けられることを想定していない。
大上段に構えれば構えるほど、その懐はガラ空きだということに、この手合は一生気づかない。
俺はコートの内側に隠した「真実」という名の、一発も撃てない錆びた銃を指先でなぞる。
引き金は重い。だが、安っぽい正義を振り回すよりは、その重みに耐えている方がまだマシだ。
引き金は重い。だが、安っぽい正義を振り回すよりは、その重みに耐えている方がまだマシだ。
「おい、聞いてるのか」
男の声が荒くなる。俺は最後の一口を飲み干し、席を立った。
カウンターに置いた小銭が、街の灯りに照らされて鈍く光る。
カウンターに置いた小銭が、街の灯りに照らされて鈍く光る。
「あんたの正義が、もし明日、誰かの腹を満たすなら、もう一度ここへ来な。
その時は、泥水のような安酒を一杯奢ってやるよ」
その時は、泥水のような安酒を一杯奢ってやるよ」
俺は背後で喚く男を置き去りにして、雨の夜へと踏み出した。
外はまだ、振り下ろされることのない「正義」の残骸で、ひどく視界が悪かった。
外はまだ、振り下ろされることのない「正義」の残骸で、ひどく視界が悪かった。
























