Nicotto Town ニコッとタウン

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追憶 モンパルナスの夕日


地平線が燃えている。
モンパルナスの空を染めるのは、
血よりも重い、琥珀色の夕日だ。
かつてモディリアーニが絶望を、
ヘミングウェイが孤独を書き殴った街。
アパルトマンのベランダに寄りかかり、
俺は冷めきったエスプレッソを口にする。
苦みだけが、生きている実感を繋ぎ止めていた。
眼下に広がる大通りは、
家路を急ぐ車たちのヘッドライトで、すでにひび割れている。
西の空が、ゆっくりと紫色の闇に侵食されていく。
あの夕日は、今日の終わりを告げているんじゃない。
引き返せない過去を、ただ焼き尽くしているだけだ。
「美しいものは、いつも残酷ね」
そう言って笑った女の、長い髪の香りが、
いまも風のなかに、かすかに混じっている気がした。
女は夕日に向かって歩き去り、
二度と、この街の影を踏むことはなかった。
煙草の灰が、風にさらわれて落ちていく。
追憶なんてものは、老いた犬にでも食わせておけ。
どんなに美しい夕日も、
あと数分で、容赦のない夜の闇に呑み込まれる。
コートの襟を立て、俺は部屋へと戻る。
闇がこの街を支配する前に、

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