Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



閉じられた世界の王様と、開かれた闇

寂れたダイナーのカウンター、あるいは退屈なオフィスの片隅。
奴はコーヒーを一口すすると、待ってましたとばかりに身を乗り出してくる。
「君の悪いところはそこだ」「こうすれば絶対に上手くいく」
他人の事情も、底にある泥の深さも知りもしないくせに、
自分の頭の中で綺麗に組み立てた「解決策」を押し付けてくる。
脳内の狭い箱庭で答えを出し、一人で納得している、あの、傲慢な「自己完結」のしたり顔。
奴らの忠告は、いつだって独りよがりだ。
「俺の言う通りにすれば間違いない」と、自分の過去の小さな成功体験を神聖視している。
こちらが口を開こうとすれば、「いや、分かっている」と遮り、
聞く耳を持たずに自分のロジックだけで会話を完結させる。
それはアドバイスなどではない。
他人の人生を自分の支配下に置き、自分の「正しさ」を確認したいだけの、極上のオナニーだ。
「これでお前の問題はすべて解決だ。感謝してほしいくらいさ」
満足げに胸を張る奴の目は、自分の完璧な推理に酔った三流探偵のそれだ。
俺は煙草の灰をトレイに落とし、その哀れな男の顔を正面から見据えた。
奴のシステムの中では、俺の孤独も、俺の戦いも、すべて記号化されて処理されている。
本当の人生ってやつは、そんな数式のように割り切れるものじゃない。
予想もしない裏切り、計算外の痛み、明日をも知れぬ暗闇。
その泥沼の中で、のたうち回りながら見つけるものだ。
安全な机の上でプラモデルを組み立てるように、
他人の生き方をコントロールできると思っている奴らに、
現実の風の冷たさが、一瞬でも想像できたことがあるだろうか。
「素晴らしい脚本だな。だが、主役の俺には退屈すぎる」
俺は紙ナプキンに、奴の頼みもしないアドバイスの倍以上の額のチップを包んで置く。
「お前の閉じた世界の中で、一生その完璧な正解とやらに抱かれて眠るんだな」
呆然とする自己完結の王様を置き去りにして、俺はドアを開ける。
外には、奴の計算式には決して現れない、混沌としたリアルな夜が広がっている。_

#日記広場:日記




Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.