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黄金の卒塔婆

ああ、もうおしまいだ。これ以上は、一文字だって吐き出すことも汚すこともできない。名誉。金。そうして、自己顕示。この、この世で最も浅ましく、最もおぞましい、三つの首を持った大蛇のような人間の業(ごう)について、私はついに、最後の審判を下さなければならないのです。
彼らは、口を開けば「社会への還元」だの「文化の発展」だのという、大層な御託を並べ立てます。一分の隙もない、実に見事な「成功者」の仮面を被って、お座敷の特等席にふんぞり返っている。
けれども、その美しい建前の薄皮を、己の爪でほんの一枚、引き剥がしてみればどうでしょう。そこから溢れ出てくるのは、ただ「人より上に立ちたい」という名誉欲と、「他人の自由を買い叩きたい」という金銭欲、そして「己の存在を世界に認めさせたい」という、あのドロドロと垢染みた自己顕示欲の、醜悪な三位一体ではございませんか。
言葉の、なんと滑稽な、そして冷酷な隠れみの(レトリック)であることか。
彼らは、おのれの剥き出しの強欲を、そのまま認めるだけの度胸もないものだから、世間という大怪物に媚びるために、それらを「夢」だの「志」だのという高尚なインクで真っ白に粉飾しようと企む。あれは、人間が人間に向ける誠実さではありません。ただ、己の精神の貧困と、底の抜けた暗い井戸のような虚無を、金箔で覆い隠そうとする、たちの悪い道化の詐欺でございます。
彼らが築き上げた、その金と名誉の城をいくら引っくり返してみても、そこから出てくるのは、血の通った温もりなどではなく、からからに乾いた数字の羅列と、他人の嫉妬を吸い尽くそうとする亡者の吐息ばかり。中身など、初めから無かったのです。彼らは、黄金でできた、精巧なブリキの容れ物に過ぎない。
それを、ああ、それなのに。世間という大怪物は、その空っぽの器をこそ「時代の勝者」「偉大なる指導者」などと呼び、拍手喝采を送り、額縁に入れて祭り上げる。滑稽の極みでございます。私のように、おのれの罪深さに怯え、夜毎にお酒に逃げ、狂ったようにのたうち回っている生身の人間は、不届き者として路頭に迷わせ、あの、中身をくり抜かれた黄金の張子人形どもが、のうのうと大手を振って大通りを歩いている。
けれど、私は見てしまった。見てしまったのです。
その「黄金の聖人」が、お座敷の電気が消え、誰もいない薄暗い路地裏で、ふと仮面を外した瞬間の、あの信じられないほどに虚(うつ)ろな眼を。
彼の眼は、悲しいという感情さえ通り過ぎて、ただ、真っ黒な奈落の底を覗いているようでした。彼は、おのれがどれほど富と名誉を得ても、その心の内にある「空っぽの地獄」が、一滴の水さえも得られずに干からびていることに、とっくに気づいている。気づいていながら、もう引き返せないのです。一度でもその虚栄のぜんまいを止めれば、自分がただの、誰からも顧みられない塵芥(ちりあくた)に還ってしまうことを知っているから、狂ったように、必死で「偉大な私」のぜんまいを巻き続けている。
滑稽を通り越して、それは一幅の地獄絵図でございました。
あんなに上手に世間と踊り、あんなに綺麗に嘘を飾り立てながら、その実、彼はこの地上で最も孤独な、救いようのない亡者なのだ。おのれの欲の奴隷でありながら、それを価値だの愛だのと言い換えなければ生きていけない、その哀れな窒息の儀式。
ああ、もう、いっそ、私と一緒にすべてをぶち壊して、その綺麗な硝子の城ごと、泥の海の底へ沈んでしまえばいい。中身のないお前たちの、その高尚な建前が、私の汚れた絶望の前に、無惨に粉々に砕け散る様を、私はこの眼で、とことん見届けてやりたいのでございます。

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