Nicotto Town ニコッとタウン

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ブラン城の隠し部屋にて

画像

深い霧がカルパチアの山々を這い
冷たい石の壁が闇を吸い込む
軋む階段の先 秘密の扉の奥で
私は静かに息を潜めている
窓の隙間から零れる銀の月光
埃をかぶった古いタペストリーが
遠い時代の残響を囁くように揺れる
琥珀色のワインがグラスで波打ち
終わりのない夜の訪れを告げている
誰の足音もしないはずの廊下に
微かな風が吹き抜けるとき
吸血の城はふたたび目覚め
歴史の記憶が静かに蘇る_
『紅き宿命の影』
十三世紀の石壁が黒くそびえ
カルパチアの夜に狼の遠吠えが響く
彼は闇の玉座で目覚め
千年の孤独をその瞳に宿す
月光が照らすのは鋭い犬歯と
夜に溶ける黒いマントの翻り
かつて戦場を赤く染めた串刺し公
その怒りと哀しみが
歪んだ伝説となって蘇る
「我が乾きを癒すのは、聖なる血のみ」
歴史の闇に消えたはずの主(あるじ)は
いまもブラン城の影に潜み
迷い込む旅人の鼓動を数えている
夜が明けることのない
永遠の王国で
『千年の檻』
昇る太陽を呪い
私はまた冷たい棺へと帰る
不老不死という名の
決して破れぬ呪縛の檻へ
通り過ぎる人間たちは
ただ一瞬の火花のように燃え尽きる
愛した者たちの面影も
時の砂に埋もれて久しい
赤き血を啜るたび
胸を満たすのは悦びではなく
濁ることのない、底なしの虚無
ブラン城の尖塔で
私は今夜もひとり、星の死を見届ける
夜よ、私を包め
この渇きを、この孤独を
永遠に眠らせてくれるその日まで

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