湖に投げた涙壺によせて
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/07/16 22:01:20
1
僕たちの記憶が しずかに昏(く)れてゆくころ
そこには ひとつの青い湖(みづうみ)があった
風は かすかなさざめきを連れて
失われた季節の お話をくりかえしていた
そこには ひとつの青い湖(みづうみ)があった
風は かすかなさざめきを連れて
失われた季節の お話をくりかえしていた
あなたは あんなに小さかった硝子の壺を
その細い指先から そっと放した
そは(其は) あふれるほどの涙をあつめて
ひそかに胸の奥に しまわれていたもの
その細い指先から そっと放した
そは(其は) あふれるほどの涙をあつめて
ひそかに胸の奥に しまわれていたもの
あたたかな陽射しのなかで 光っていた日も
つめたい夜露のなかで 凍えていた夜も
僕たちは ただひとつの言葉を
さがしつづけていたのではなかったか
つめたい夜露のなかで 凍えていた夜も
僕たちは ただひとつの言葉を
さがしつづけていたのではなかったか
2
水面(みなも)は ひとつの輪をえがいて
それから すぐに元のしづけさに還った
底ふかく 沈んでゆく小さなゆめを
魚たちは 見おくることも partners としない
それから すぐに元のしづけさに還った
底ふかく 沈んでゆく小さなゆめを
魚たちは 見おくることも partners としない
「さようなら」と つぶやいたのは僕だったか
それとも 風にまたたく雲の影だったか
もう 涙をたくわえる器(うつは)をなくして
僕たちの瞳は 乾いた空を映している
それとも 風にまたたく雲の影だったか
もう 涙をたくわえる器(うつは)をなくして
僕たちの瞳は 乾いた空を映している
忘れてしまおう あんなに優しかった日々を
水底(みなそこ)のくらやみで 壺が眠るように
追憶は 冷たい砂にうもれて
いつしか ひとつの美しい物語になる
水底(みなそこ)のくらやみで 壺が眠るように
追憶は 冷たい砂にうもれて
いつしか ひとつの美しい物語になる
3
窓をひらけば 遠い山なみがかすみ
どこかで 小鳥がせわしげに啼いている
僕は あなたのゆくえを知らないけれど
この風のなかに あなたの呼吸をきく
どこかで 小鳥がせわしげに啼いている
僕は あなたのゆくえを知らないけれど
この風のなかに あなたの呼吸をきく
おやすみなさい 僕のあわい哀しみたち
湖(みづうみ)は すべてを深く包みこみ
ただ 青い、青い鏡となって
あしたの あたらしい光を待っている
湖(みづうみ)は すべてを深く包みこみ
ただ 青い、青い鏡となって
あしたの あたらしい光を待っている

























