Nicotto Town ニコッとタウン

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サマータイム


熱気がアスファルトにへばりつく、息苦しい熱帯夜。
まとわりつく湿気の中で、街は死んだように煤けている。
不夜城のメッキが剥がれた、場末の飲み屋街。
路地裏のスピーカーから、場違いな咆哮が響いていた。
シドニー・ベシェの「サマータイム」。
狂おしいソプラノサックスのヴィブラートが、熱い夜気をねじ切る。
本来は子守唄のはずの旋律が、ここでは焦燥を煽る挽歌だ。
氷の溶けきった安物のグラスを指で弄ぶ。
汗と、煙草の煙と、アルコールの悪臭。
男たちは皆、熱に浮かされたように黙り込んでいる。
ベシェの音は、容赦なく過去の傷口を抉ってくる。
乾いた喉を焼く、一杯のバーボン。
だが、どれだけ煽っても、この胸の渇きだけは癒えない。
ジリジリと鳴く蝉の死骸が、舗道に転がっている。
この街の夏は、生ぬるい地獄だ。
誰もが重い足取りで、終わらない夜の深みへと落ちていく。

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