Nicotto Town ニコッとタウン

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サマータイム2


カウンターの氷が、不協和音を立てて小さく砕けた。
バーボンはもういい。
喉が求めているのは、もっと冷徹で、容赦のない冷気だ。
差し出されたのは、水滴を纏ったジン・アンド・トニック。
ライムの鋭い青さが、濁った空気を一瞬だけ切り裂く。
グラスをあおると、ジンの苦味と冷気が、熱に犯された脳髄を直接突き刺した。
店内のジュークボックスが、静かに主(ぬし)を替える。
流れてきたのは、マイルス・デイヴィスの「カインド・オブ・ブルー」。
ベシェの熱情とは対照的な、冷え切ったトランペットの調べ。
音の一つひとつが、まるで真夜中の氷柱(つらら)のように鋭く、孤独に響く。
モード・ジャズの旋律は、どこへも向かわない。
ただ、この退屈で熱い現実を、静かに凍らせていく。
グラスの表面を伝う滴が、カウンターに小さな染みを作る。
冷たい酒と、冷徹なジャズ。
それだけが、この狂った熱帯夜で正気を保つための、唯一の武器だった。

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