寂れた温泉宿から
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/07/20 15:09:38
裂けた岩肌から、白く、かそけき霧は立ち
ゆらぎながら、青い空へと消えてゆく
それはむかしの人が忘れた、ため息のやうに
誰もゐない斜面を、ひそかに濡らしてゐる
ゆらぎながら、青い空へと消えてゆく
それはむかしの人が忘れた、ため息のやうに
誰もゐない斜面を、ひそかに濡らしてゐる
谷の底には、いつかひとの造ったみづうみ
鏡のやうに、動かぬ雲を映してゐる
その底ひには、沈んだ村の、或る日のひかり
静けさだけが、いまは、深く湛へられて
鏡のやうに、動かぬ雲を映してゐる
その底ひには、沈んだ村の、或る日のひかり
静けさだけが、いまは、深く湛へられて
あたたかな煙は、つめたい風にさらされ
どこへ行くともなく、たゆたひ、はぐれ
旅人のこころを、あてどなく誘ふ
どこへ行くともなく、たゆたひ、はぐれ
旅人のこころを、あてどなく誘ふ
私はただ、この岩のほとりに佇み
失はれたものたちの、かすかな声をきく
夏のひるさがりの、かなしい夢のなかで
失はれたものたちの、かすかな声をきく
夏のひるさがりの、かなしい夢のなかで
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