Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



その一輪の花2


私はそっと、その一輪の花に、指先をのばす
朝陽に透ける、薄い花びらの、あまりの危うさに
私のかなしみが、触れて汚してしまはぬやうに
息をひそめ、そつと、こころのなかで語りかける
「おまへはなぜ、こんな寂しい岩のあいだで
だれに見られるでもなく、美しく咲いてゐるのか」
風がまた、さやさやと湖の波を揺らし
私の問いかけに、やさしく答へるかのやうに
花はただ、ひたむきに光をあつめて
私のふるえる手を、静かに迎へてくれる
背負うてきたおもひが、少しずつ、軽くなってゆく
あぁ、私はこの一輪の、ちいさな生命のために
もういちど、自分の歩むべき道を愛せるだらうか
霧の晴れゆく湖畔に、私のあたらしいうたが流れる

#日記広場:小説/詩




Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.