白浜の追憶
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/07/28 21:57:29
序文(まえがき)
ひとつの旅のやうに、私の心のなかの風景はうつろひ、そしてここに小さな手帳となって留まる。
はじめに白浜のひるすぎの、あのあかるい光のなかにたたずんでゐた一羽の海鳥が、私のなかの孤独の形であつた。それはやがて、だれもゐない夜の渚にそそぐつめたい月光となり、私のすべてであつたあの人への、かなしい祈りの歌(レクイエム)へと深く沈んでいつた。
人は失つたものの大きさを、どうしてこれほどまでに歌はなければならないのだらう。私はただ、風のやうにすぎてゆく時間のなかで、消え去つてゆく面影を、言葉といふあやうい器にすくいとらうと試みたにすぎない。
ここにあるのは、ひとつの古い追憶であり、同時に、いまも私の胸のなかで鳴りやまない音楽の、ささやかな調べである。
あの夏の日のあかるい渚は どこへ行つたのだらう
おまへとふたり 白い砂の上に並べた貝殻
きらめく波は 永遠の幸福を歌ふやうに
私たちの足元を やさしく濡らしてゐたのに
おまへとふたり 白い砂の上に並べた貝殻
きらめく波は 永遠の幸福を歌ふやうに
私たちの足元を やさしく濡らしてゐたのに
いまはただ 誰もゐないつめたい白浜に立ち
私はひとりで すぎて去つた時間をかへりみる
夕日はあんなにも かなしく赤く燃えあがり
おまへの面影を はるかな波の彼方へ連れてゆく
私はひとりで すぎて去つた時間をかへりみる
夕日はあんなにも かなしく赤く燃えあがり
おまへの面影を はるかな波の彼方へ連れてゆく
夢であつたなら どれほどよかつたらう
おまへの呼ぶ声が いまも風のなかに聴こえる
追憶はただ 満ちてはひく潮のやうに
おまへの呼ぶ声が いまも風のなかに聴こえる
追憶はただ 満ちてはひく潮のやうに
もう届かないその手を 私は暗がりにのばす
月光がしづかに 砂の上の孤独を照らしだすまで
私はここにゐる おまへの失はれた光をさがして
月光がしづかに 砂の上の孤独を照らしだすまで
私はここにゐる おまへの失はれた光をさがして



























