夜明け前のブルース
- カテゴリ:日記
- 2026/08/02 22:25:22
トレンチコートの襟を立てても、
染みついたタバコの匂いは消えやしない。
ジッポの火が赤くうねり、
灰皿の山が昨日の死屍累々を語る。
染みついたタバコの匂いは消えやしない。
ジッポの火が赤くうねり、
灰皿の山が昨日の死屍累々を語る。
針が溝を叩く音がする。
ビリーの掠れた声が、
夜と朝の隙間に錆びた楔を打ち込む。
Body and soul――
魂ごとくれてやったさ_
中身の抜けたバーボンと、冷めきったコーヒー。
どちらも喉を焼くだけのガラクタだ。
ビリーの掠れた声が、
夜と朝の隙間に錆びた楔を打ち込む。
Body and soul――
魂ごとくれてやったさ_
中身の抜けたバーボンと、冷めきったコーヒー。
どちらも喉を焼くだけのガラクタだ。
窓の外で、世界が白々しく目を覚ます。
ネオンサインの残り火が消え、
路地裏の影がゆっくりと形を失っていく。
誰もいない、何も救われない、
ただ、あの歌声だけが足元に転がっている。
ネオンサインの残り火が消え、
路地裏の影がゆっくりと形を失っていく。
誰もいない、何も救われない、
ただ、あの歌声だけが足元に転がっている。
錆びたスコッチ
割れたガラスの破片のような雨を浴び、
たどり着いたのは、いつもの地下の穴倉だ。
馴染みのマスターは何も聞かない。
ただ、血の混じった雨水を拭う俺の前に、
琥珀色の液体が入ったグラスを無言で差し出す。
たどり着いたのは、いつもの地下の穴倉だ。
馴染みのマスターは何も聞かない。
ただ、血の混じった雨水を拭う俺の前に、
琥珀色の液体が入ったグラスを無言で差し出す。
カウンターの端、置き去りにされたジッポ・ライター。
あの女が最後に触れた、安物の真鍮。
指先で弄べば、まだ女の体温が残っている気がした。
だが、そんな感傷は一瞬で撥ね退けられる。
俺の胸ポケットには、さっきプラットフォームで、
すれ違いざまに奴らのナイフが刻んだ、深い肉創がある。
あの女が最後に触れた、安物の真鍮。
指先で弄べば、まだ女の体温が残っている気がした。
だが、そんな感傷は一瞬で撥ね退けられる。
俺の胸ポケットには、さっきプラットフォームで、
すれ違いざまに奴らのナイフが刻んだ、深い肉創がある。
深まる夜の闇が、意識の輪郭を少しずつ削り取っていく。
痛みの感覚さえ、店内に流れるビリーの歌声のベースラインに溶けていく。
「Body and soul」――。
魂はあの列車に乗って消えた。
残されたのは、ただ静かに終わりの時を待つ、虚無を抱えたこの身体だけだ。
グラスの中の琥珀色は、濁りゆく視界の中で鈍く光っている。
夜明けはもう、届かない場所にある。
痛みの感覚さえ、店内に流れるビリーの歌声のベースラインに溶けていく。
「Body and soul」――。
魂はあの列車に乗って消えた。
残されたのは、ただ静かに終わりの時を待つ、虚無を抱えたこの身体だけだ。
グラスの中の琥珀色は、濁りゆく視界の中で鈍く光っている。
夜明けはもう、届かない場所にある。

























