Nicotto Town ニコッとタウン

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想いでのオーヴェル


黄金色の麦畑が、
夕闇の底へ沈んでいく。
カラスの群れが空を裂き、
まるで誰かの命の終わりを告げるように、
不吉な影を落としていた。
オワーズ川の水面(みなも)は、
ひたすらに冷たく、暗い。
あの日、あの男が流した血の色を、
すべて飲み込んでしまったかのように。
俺のポケットの中、
使い古したライターが、
静かに冷えていく。
火を灯したところで、
この街の憂鬱(メランコリー)を
燃やし尽くすことなどできやしない。
教会がそびえ立つ。
歪んだ青空を背景に、
まるで行く手を阻む巨大な墓標だ。
神がここにいないことくらい、
最初から分かっていたさ。
「手遅れだ」と、風が囁(ささや)く。
カンヴァスに塗りたくられた原色は、
狂気か、それともただの執着か。
男は銃を握り、
俺はただ、煙草の煙を吐き出す。
想い出なんてものは、
引き金を引いた後の硝煙に似ている。
一瞬だけ鼻を突き、
あとは虚無の中に消えていく。
オーヴェル=シュル=オワーズ。
ここは、夢が力尽き、
現実だけが硝子(ガラス)のように
尖る街。

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