想いで 凍りついた色彩への別れ
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/08/07 14:51:48
夜が明けても、
太陽は姿を現さなかった。
ただ、濃いミルクのような霧が、
オーヴェルの街を、
そして俺の行く手を深く包み込んでいる。
太陽は姿を現さなかった。
ただ、濃いミルクのような霧が、
オーヴェルの街を、
そして俺の行く手を深く包み込んでいる。
無人のプラットホームに、
一人、佇(たたず)んでいた。
湿った空気が肺を冷やし、
昨夜浴びた安酒の残りを、
ゆっくりと洗い流していく。
一人、佇(たたず)んでいた。
湿った空気が肺を冷やし、
昨夜浴びた安酒の残りを、
ゆっくりと洗い流していく。
線路の先は、
白濁した虚無へと消えていた。
まるであいつが最期に見た、
出口のない世界のようだ。
白濁した虚無へと消えていた。
まるであいつが最期に見た、
出口のない世界のようだ。
「ここには、何も残っちゃいない」
声に出して、霧の中に放り出す。
言葉は形をなさず、
すぐに冷たい大気に吸い込まれた。
言葉は形をなさず、
すぐに冷たい大気に吸い込まれた。
あいつが愛し、命を削った
あの鮮やかな黄色も、激しい青も、
この濃霧の前には無力だ。
すべては等しく灰色に塗り潰され、
ただの「過去」という名の
遺品に変わっていく。
あの鮮やかな黄色も、激しい青も、
この濃霧の前には無力だ。
すべては等しく灰色に塗り潰され、
ただの「過去」という名の
遺品に変わっていく。
遠くから、鉄の軋む音が聞こえる。
俺を次の終着駅へと運ぶ、
冷徹な鉄の塊が近づいてくる。
俺を次の終着駅へと運ぶ、
冷徹な鉄の塊が近づいてくる。
ポケットの中で、
あいつが遺した絵の具の汚れがついた
一枚の硬貨を指先で弾いた。
未練を捨てるための、
俺なりの儀式さ。
あいつが遺した絵の具の汚れがついた
一枚の硬貨を指先で弾いた。
未練を捨てるための、
俺なりの儀式さ。
ベルが鳴る。
重いドアが開く。
重いドアが開く。
俺は一度も、振り返らなかった。
オーヴェル=シュル=オワーズ。
お前が抱く憂鬱も、
あの男の狂気も、
すべてこの霧の底に置いていく。
オーヴェル=シュル=オワーズ。
お前が抱く憂鬱も、
あの男の狂気も、
すべてこの霧の底に置いていく。
錆びついたカバンを片手に、
俺は列車へと足を踏み入れた。
また、あてのない旅が始まる。
ただ、生き延びるためだけの旅が。
俺は列車へと足を踏み入れた。
また、あてのない旅が始まる。
ただ、生き延びるためだけの旅が。

























