のちの想ひに
- カテゴリ:自作小説
- 2026/08/16 10:30:31
あんなに雪が降つてゐた 北へ向かう夜に
私はただ ひとつの失つた名前をよんでゐた
狭い二段寝台の あかりを消した暗闇で
切なさは すきま風のやうに胸をぬけてゆく
私はただ ひとつの失つた名前をよんでゐた
狭い二段寝台の あかりを消した暗闇で
切なさは すきま風のやうに胸をぬけてゆく
いまはもう消えてしまつた あの汽車の青いカーテン
誰もいない通路の かすかな白熱灯のひかり
すべては昭和の 遠い幻だつたのだらうか
私の涙のやうに 窓の雪は溶けて流れてゐた
誰もいない通路の かすかな白熱灯のひかり
すべては昭和の 遠い幻だつたのだらうか
私の涙のやうに 窓の雪は溶けて流れてゐた
明日の朝のひかりが 灰色の空をひらくとき
私は見知らぬ終着駅へ たどりつくだらう
そこにはただ 冷たい風が吹いてゐるばかり
私は見知らぬ終着駅へ たどりつくだらう
そこにはただ 冷たい風が吹いてゐるばかり
失はれた季節の 激しい雪のふりしきるなか
私は独り あのガタゴトと鳴る車輪のひびきを
いまも心の底で やさしく聴きつづけてゐる
私は独り あのガタゴトと鳴る車輪のひびきを
いまも心の底で やさしく聴きつづけてゐる

























