仮想劇場『cake.』
- カテゴリ:自作小説
- 2026/08/21 23:02:40
昨夜とうとう根をあげてしまったエアコンの吹き出し口にちいさな水滴がひとつだけ留まっている。蒸し風呂のような寝室に朝陽は容赦なく差し込み、左目の煩わしさから逃れるように僕は部屋の隅っこまで体を転がした。
駅ビルのむこうの公園で今年最後の集団ラジオ体操の音楽。それに呼応ように表通りの街路樹から遅孵りした蝉の合唱。
どうにか身を起こし「おはよう」と僕が言うと、君は寝汗にまみれた胸元を小さなタオルで拭いながらも、なんとか「おはよう」と返してくれた。
朝ごはんは僕が用意したオートミールの冷製豆乳トマトスープ。
「おいしくない・・」と駄々をこねるキミに僕はどこか安心してしまっている。
「今日は昼ご飯の代わりに21st.の『blueberry fields』で一番高いショートケーキを買ってきてあげるから」
そういいながらちゃぶ台に頬杖をつき僕は、いまも不満げにスプーンをかじる君の顔をまじまじとみつめていた。
そう、今日は特別な日。
昨日となんら変わらぬ日常であっても今日だけは特別な日だ。
「そういうことならワインも買ってきてよ」と君は眉間に皺をよせる。
「いちばんおいしそうなのを見つけてくるよ」と僕が答えると君は「お昼はゆっくりでいいからね」と小さく舌を出して笑った。
それは難しいことは抜きにして夏の終わりが【嫌いじゃない理由】として君がいる。
・・・ということ。



























