風の森によせて 無音のソネット
- カテゴリ:小説/詩
- 2026/08/29 10:54:39
僕はただ しづまりかへつた森にゐる
声をなくした つめたい風の森よ
梢をわたる風さえも いまは息をひそめ
世界のすべてが しんと凍りついてしまったごらん 音もなくこぼれる月明かりが
影ばかりの僕の足もとを 白く照らすのを
あんなに遠くへ去つてしまった 僕の時間(とき)は
この深い沈黙の底に 深く沈んで消えた何もきこえない 暗い木立のあひだから
僕のなげきさえも 闇に吸はれてゆくだけ
もう二度と あかるい羽ばたきは戻らない僕はただ 音のない草の上に身をよこたへ
凍てついた月をあふぎ 静かに目を閉じるのだ
ひとつの言葉も 夜のなかに遺さずに




























