タケシの武勇伝…(24)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/11/05 01:02:10
「何にしたって、今返事すんのはムリっすよ」
「ええ、それは分かってます。それにお母さんとも相談しなければならないでしょうしね…でも、私としては是非了解して欲しいと思っています。まあ、手術よりもリハビリの方に時間がかかるでしょうから。もちろん費用など一切かかりませんのでその旨も一つ考慮してください。」
「北野くん、僕も是非受けて欲しいんだ。ウチの研究所が君の復帰に力になれたら僕としてもホッするし、なにより君のマウンド姿をもう一度見れれば嬉しいしね!」
シンさんが満面の笑顔で声をかけた。完全にマウンドにいるタケシの姿を思い描いているまなざしだ。
正直、タケシはそんなシンさんの視線が辛いと感じていた。自分ももう一度野球がしたい気持ちはある。だが、一度あきらめた思いにすぐに火がつくほど単純でもない。
「とにかく一度考えさせてください。正直、手術を受けることも不安があるし…ところで、どうして今さら時間がかかると良くないんすか?ケガしてからもう8ヶ月も過ぎてるし、なんか問題があるんすか?」
「これはちょっと難しい話になるのですが、人間の末端細胞は…まぁ、貴方の場合だと使えなくなった指先のことですが、時間が経ち過ぎるといくら神経をつなげても指の周りの筋肉や組織が活性化しなくなるのです。幸い貴方の場合、まだ身体的にも若いし、外部から力をかければ指自体は曲げられる状態にある。時間が経つとそれもできなくなるんです」
「北野くん、人間の体って使わない部分ができるとそこに必要最小限しか栄養を送らなくなるんだ。だからそのままの状態でいると、君の中指だけが他より細くなっていくんだ。どうだい、もうだいぶ細くなってるんじゃないかい?」
シンさんの言うとおり、確かにタケシの中指は細くなっていた。人差し指とほとんど変わらない太さだった。
「さっきも言ったように、君のケガの責任は僕のウチの責任だと思ってる。だから北野くん、頼むから手術を受けて欲しい。富山先生に頼んで、最初に君にプリントを届けて欲しいって言ったのもそのためだったんだ」
この言葉を聞いた瞬間、体育教官室の去り際にゴリ山さんがどうして優しい言葉をかけてくれたのかが分かった。
・・・もしかして、ゴリ山さんはこのこと知ってんのか?
タケシは、また新しい疑問が一つ増えた気がした。
※※つづく※※
ここに来てにわかに注目の集まったゴリ山さん。これから物語に深く関わってくるのでしょうか?
謎が解けたぜb
僕も野球ができなくなったら、すぐに手術すると思うし
治るわけがない指が、治るかもしれない、絶好のチャンスだと思います。
ゴリ山さんが、もし知っていたなら早く言ってほしかったですよね
毎度呼んで戴きありがとうございます。