タケシの武勇伝…(26)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/11/10 15:41:33
その夜・・・
やけにテレビの音が大きく聞こえる中、タケシとヒロシはテーブルに食事を並べながら母の帰りを待っていた。いつも母が仕事で帰りが遅いため、夕食の準備は兄弟で行っているのだ。
ただ、いつもと違っていたのは、他愛ない会話や料理のデキで喧騒となるはずの夕飯支度が黙々と行われていたことだった。
もちろん、その原因はタケシにあった・・・
帰宅してから自分の部屋に直行したタケシは、夕飯の準備にかかるまで一切部屋から出てこなかった。夏休みでたまたま家にいた弟のヒロシが昼食の呼び出しをしても、『今日は昼いらない』と言って部屋に篭ったままだった。
…何か気に入らないことでもあったんか?
ヒロシは、こんな時のタケシには関わらないことに決めていた。なぜなら、タケシが怒ったら絶対に敵わないことを誰よりも知っていたからだ。
身長175cm、体重65kgと中学2年にしてはかなり良い体格をしているヒロシだが、タケシは身長・体重ともに10cm・10kgづつヒロシを上回っていた。しかも、中学時代に豪腕投手として鳴らしたタケシのパワーは人並みはずれていた。
今から4年程前、ヒロシが小学4年生の時、当時6年生だったタケシが一度だけ他人とケンカしたところを目の当たりにしたことがあった。
野球が終わった帰り道、植え込みで囲まれた公園での出来事だった。【目が合った…】というだけでケンカを吹っかけてきた相手は、近所に住む中学生3人組だったが、タケシは一見してその中でアタマと思われる者の胸ぐらを両手で掴むと、同じくらいの体格をした相手を一旦上へ持ち上げてからそのまま植え込みの中へ投げ込んだのだ。
植え込み深く投げ込まれた相手は、足だけ覗かせてバタバタもがき助けを求めた。その声を聞いた残りの2人は、ただ唖然として立ち尽くしたままだった。そばにいたヒロシでさえ、口をアングリとしたまま見つめていただけだった。
それ以来ヒロシは、口ゲンカはしても絶対に手だけは出せなくなった。というより、それ以前から兄弟ゲンカはしてもお互いに手を上げたことは一度もなかった。だが、それがアニキの優しさだったことをヒロシは気付かされたのだ。
男がパワーに憧れるのは今も昔も変わらない。だが、タケシのパワーは野球以外に発揮されたことはなく、中学時代のタケシの存在はヒロシの自慢だった。あの事故に遭うまでは・・・
事故に遭ってからのタケシは、今まで持っていた陽気さが全く表に出なくなっていた。パワーの行き場を失くし、何をするでもなく家でゴロゴロするばかりだった。そんな兄の姿に一番苛立っていたのがヒロシだった。
不機嫌そうな兄との気まずい雰囲気の中、興味のないテレビ番組をただ黙って見ているのが辛くなってきた頃、カチャリとドアの開く音がした。ようやく、母さんが帰ってきたのだった・・・
※※つづく※※
ようやく書けました・・・
興味尽きないところですね。
ヒロシもタケシの事をよく分かっていて
良い兄弟だとおもいます。
気まずい雰囲気抜け出せた?
わたしはとってもすぐ終わってるのにな~^^
ステキプッシュだぞ!!
まぁ男はねぇ^^
ステプッ
兄弟っていいですね。
俺も兄から結構優しくしてもらってますしね。
しかしタケシは兄弟喧嘩でそこまで本気を出すようには見えない。