Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


以前書いた物語 いんこな日々-第10章-(前編)

第10章 恋の架け橋(前編)

「…心…」
ポツリとグリ子が言った。
「はぁ?心?」
聞き返すと グリ子がうらみがましく身をよじった。
「あんた ちゅう坊と随分 仲良いじゃないの?」
唐突になんで ちゅう坊なんか出てくるわけ?と思ったが、私が口をはさむ隙はなかった。
「私 私 ちゅう坊が好きなのにぃ…あんたとちゅう坊が楽しそうにおしゃべりしているのを見てるのがつらくって、悲しくって きのうから 餌ものど通らない…」
ぎょえええ~~!青天の霹靂だっ!
「ウソでしょ?私とちゅう坊に嫉妬してたってこと?だって、あんた ちゅう坊を追っかけまわして いじめるにいいだけいじめていたじゃない?」
グリ子が悔しそうに言った。
「好きだから いじめたくなっちゃうのよ。ちゅう坊と仲良く出来るあなたに 私のつらさなんか わかんないわよっ!」
やつ当たりもいいとこである。
「お門違いじゃないの?ちゅう坊がちょっかい出していたの、オカメのグレ子の方じゃないの。」
私が言うと グリ子はフンと鼻をならして
「グレ子?あんなの遊びに決まってるじゃないの。ちゅう坊がオカメに本気になるわけないじゃない。だってオカメよ?セキセイがオカメに本気になるわけないでしょ」
フフン、とグリ子は鼻でせせら笑った。オカメに対して 強気のセキセイの構図、そのまんまである。
「でも あんたは違う、だって あなたは セキセイなのよ、それなのに 恋敵のあんたに助けられるなんて…」
ここまで言うとグリ子は絶句した。ついでに私も絶句した。ちゅう坊と恋仲だと 勘違いされたなんてさ。ちゅう坊は鳥友だけど、恋鳥としての好みの許容範囲でないんじゃ!

気を取り直すと 私は言った。
「とにかく あんた 餌食べなきゃ 元気になれない」
「だから食べたくなんかないってば…」
「わかった、寒いのおさまったみたいだから ちょっと待っていてよ。」
私はグリ子のかごを抜け出すとちゅう坊のかごに入って行った。
「事情はきいていたわよね?」
ドスをきかせて私はちゅう坊に尋ねた。
「グリ子とグレ子、あんた どっちとる?」
ますますドスをきかせて私は詰め寄った。
「グ…グリ子…って言えばいい…の?」
オズオズ、とちゅう坊が私を上目づかいで見返した。この男は!優柔不断でどーしよーもない!そう思いつつも こーいう男は 強引に手引きしちゃうのが得策である。私は命令した。
「それなら すぐ 餌 腹一杯食べろ!」
「はいっ」
ちゅう坊は素直に餌箱に顔をつっこんだ。思考停止状態のちゅう坊である。

「ちゅう坊は 私を捨てるの?」
オカメ女グレ子が背後でボソリとつぶやいた。私は一瞬背中がゾワ~ッとした。存在をすっかり忘れていたのだ。
「う…。でも…そうよ、セキセイとオカメじゃ 始めから無理があったのよ、あきらめなよ…」
捨てられた過去のある私は グレ子の気持ちを考えると、つらかったけど きっぱり言いきった。
どう考えても セキセイとオカメのカップルには 不毛な未来しかないのだから。
「そういうもんなの?」
グレ子は 視線を宙にさまよわせながら ぼんやり つぶやいた。一瞬 こいつ ほんとに大丈夫か?と不安になったけど、今はグリ子の体調を戻すのが先決である。

元はといえば このへなちょこ優柔不断男が全部 悪いんじゃ!そう思うと 訳もわからず餌食べているちゅう坊にムラムラ腹が立ってきて 一発 蹴りをいれずにはいられなかった。
ボカッ!
「い、痛いっ!何するん…」
ちゅう坊の抗議の言葉は 途中で切れた。
「とっとと食べろっ!」
鬼の形相で私が吠えたからだ。

腹いっぱいに餌を食べ終わったちゅう坊に
「じゃ 行くよ、ついてきて」
と声をかけた私は よっこいしょと かごの扉を押し上げた。ちゅう坊にかごの外に出るように促し 自分も続いて出る。
名付けて「愛のゲロゲロ作戦」である。ひねりのない作戦名なのは 見逃してくれ、ここの飼い主のいんこの名前のつけ方のセンスよりは マシだと思う(断言)。
とにかく 食欲のないいんこには 吐き戻しの餌が一番効果的である。
ちゅう坊が鏡になすり付けた吐き戻しを ある時 何気に拾って食べた私は稲妻が走ったような衝撃に全身がしびれた。カナリーシード以上の逸品だったからである。
恋の悩みぐらいのレベルなら 吐き戻しで食欲は簡単に戻る。
へのかっぱである。
始めは 手っ取り早く 私がグリ子に 餌の吐き戻しをして、食べさせようか、とも思ったのだが、実行すれば私のいんことしてのファースキスの相手がグリ子ということになってしまう。いくらなんでも私が哀れである。
ここはひとつ ちゅう坊にゲロゲロさせればいいのだ、と私は即座に思いついた。恋するちゅう坊の吐き戻しを グリ子が拒絶するはずないし また グリ子への吐き戻しというはっきりした愛情表現によって グリ子の私への勘違いな嫉妬も消滅するわけで 一挙両得の名案である。
(つづく)

アバター
2009/11/13 21:06
こんばんは♪

えーっ!?そういう理由だったんですね…びっくりΣ(◎_◎)
お部屋の中の恋模様、可愛いですね❤なんだかみんな応援したくなります!

ますます続きが気になる…!!
アバター
2009/11/13 20:28
餌の吐き戻し・・・・・ペンギンなんかできいたことがあるけど
鳥なら当たり前の話なんですね

勉強になるわぁ(^_-)-☆
アバター
2009/11/13 15:43
いつもコメントありがとうございます。

餌の吐き戻しが おいしい理由は私には
全く理解できないのですが(^^;
育雛時に親が与える流動食なのです。
これを 恋する相手にあげるのが告白、受け取って
食べるのが プロポーズの受理というかんじ
らしいです^^。見ていて面白いです。
たまに飼い主にくれようとするのもいたり
するんですが(←好きになれば不毛な恋愛でも
突っ走ります)勘弁させてもらってますw
アバター
2009/11/13 12:36
吐き出したエサって おいしいんだ~w 

でも、好きな人のなら 食べたいかな~[岩蔭|]^⌒)bうふっ ナンチッテw
アバター
2009/11/13 09:04
みんなと仲良くなってきている!恐ろしい看守シーン、可笑しい。昨日の落し物も気になる!
毎日のお楽しみです。
アバター
2009/11/13 02:53
(。-`ω-)ンーそんなに美味しいのか・・・・
どんどん話が面白くなるね
次が楽しみ❤



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