Nicotto Town


まぷこのぶろぐ・・・か?


「契約の龍」(129)

 「その前に、確認したい事があるんだが…どうして契約者の死後も、魔法が継続してるんだ?」
 ――大きな理由の一つは、われら自身が呪陣を構成しているから、だの。もう一つは、領域内にある者どもが契約を代行しておる、という事かの。
 つまり、学生や職員が、学院内にいる「力あるモノ」たちやその本体を保護している限り、学院内に働いている魔法は有効である、という事か。
 「…とりあえず、契約後も学生の授業とか実習に支障は生じないんですね?」
 ――そなたがそう望むのであればな。
 …なるほど。
 「…では、いったん契約した後、内容の変更をする、というのは?」
 ――契約の根幹に反するような内容でなければ可能かと思うが。
 「根幹に反する内容、というと?」
 ――そうだの…例えば、この領域内での殺生を禁じる、とかかの。われらのうちには、より小さなモノを糧とするモノもおるでな。この領域から出られぬ者にとっては、到底呑めぬ内容だからの。
 「では…常につき従う、というのも、拒否はできない?」
 ――今までも、われらの内にある間は、そうだったが…気がつかなんだかの?
 …は?……今まで、も?
 「この人の場合は仕方がないと思うわよ。聞いたところによると、物心ついた時から囲まれてたんでしょ?身近すぎて判らないと思うわ。さっきだって気がつかなかったでしょう?」
 ――そういえば、そうだったの。
 …という事は、入学してからこっちの言動は、ほとんど把握されていると?
 覚えてもいない子どもの頃の事を持ち出されるより、よほど恥ずかしいのではないか?
 ――…そなたが気に病んでおるのは、われらがそなたとともにある事を、親密な誰かが気にはせぬか、という事ではないか?
 「…それもあるが……どちらかというと、自分が一人で居たい時がある、という方が大きい、かな」
 ――そういえば、大人の目の届かぬ所に隠れるのが好きな子であったの。
 油断すると、これだ。
 ――まあ、われらは存在を希薄にする術に長けておるでな、そう気に病むでない。何なら、契約に盛り込めばよい。「姿を見せるな」と。
 「…そこまでは言わないが、できれば存在を意識できない方がいいかなあ、と。あ、っと、それから、外でも同じ状況になるってことかな?契約すると」
 ――だから、契約にそういう内容を入れれば…
 「解りました。で、具体的にどうすればいいんですか?」
 ――そうだの…
 そうつぶやいて、緑色の華奢な指を、形の良い口許に当て、しばし考え込む。
 ――せっかく、言葉の解る者がおるのだから、「契約の言葉」を練ってもらおうかの。
 と、クリストファーの方を見て言う。
 「な…なんで、俺?言葉が解る、というのだったら、他にも…」
 ――この機会を逃すと、その知識を活かす場は、もう訪れないであろうよ。…魔法使いへの道を歩まないのであれば。
 「…活かす機会が訪れそうにない知識なら、他にもいっぱい持ってるし」
 「使う機会が来ない方がいい知識、というのも確かにあるけどね」
 クラウディアがクリストファーに詰め寄る。
 「使う機会があるかどうか、今から決めつけてどうするの?」
 そう言いながらクリストファーの耳を引っ張り上げる。…自分の頭頂部よりも更に上にあるというのに。
 「いたいイタイ痛い。べ…別に決めつけている訳じゃ…」
 「…どちらでもいいですから、「契約の言葉」を訳してください。もし、どちらの方もいやだとおっしゃるなら、別の方法を教えていただきたい」
 ――そうさの。……そなたが多少の苦痛を厭わぬ、というのであれば、「血の誓約」という手段もあるがの。
 禍々しい名前がついているな、と思ったら、クリストファーが蒼褪めた顔で、慌てて口をはさむ。
 「解った。俺がやる」
 学院で教わった覚えのない言葉なので、たぶん、かなり古い方法なんだろうが…あんなに慌てるとは…どんな方法なんだろう?
 後で調べてみよう。

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