タケシの武勇伝…(30)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/11/18 02:17:18
「失礼します!!」
タケシとリョウは見事にハモって入室の挨拶をした。もう充分言い慣れている証拠だった。
「おう、入れ…」
ゴリ山さん( 富山先生 )は、いつもの席で悠々と座っていた。
「あれ?北野、お前はこないだ担当だったろう。なんで今日来たんだ?」
「ハイ!富山先生に聞きたいことがあったからです!」
ゴリ山さんと会話するには、誰もがみな大きな声の【ですます調】で話さねばならなかった。それも男子生徒は、自らのことを「自分」と言わねばならなかった。いくら教育指導員とはいえ、まったく一昔前の体育会系か渡哲也と高倉健さんくらいである。
「で、なんだ?聞きたいことって…」
「ハイ!シン…佐々木さんの家に行った時に聞いたのですが、自分が一番手に行かせられたのは佐々木さんの指名だそうですが、先生は自分が佐々木さんから何か相談されるのをご存知だったのでしょうか!」
通学路で練習したとおりの言葉だった。
「いや、特に何も聞いてないぞ…何か言われたのか?」
「ハイ!実は、自分の指を治してくれるという話を聞かされました!先生は先日、『自分に何かあったら相談しろ』とおっしゃったので、何かご存知だったのかと思って伺いましたー!」
これも練習したとおりの言葉だった。
タケシは、ゴリ山さんならたとえ話の内容を知ってても、『知らない』と答えるかもしれないと予想していた。
ゴリ山さんがタケシを送り出す際に、『お前の運動神経なら何でもできるんだから、もったいないことするなよ』と言った。だが、『スポーツをやれ』とは言わなかった。ということは、タケシが何を相談されるかまったく知らないのか、もしくは、やるかやらないかはタケシ自身の判断だと考えていると思ったのだ。
「そうか…で、お前は手術を受けるのか?」
「ハイ!受けたいと思って今日返事をしに行くつもりで来ました!」
「そっかそっか…うん、良かったな。おう、しっかり頑張れよ!」
笑顔で席を立ったゴリ山さんは、おもむろにタケシのアタマに手を乗せると、良い話なのにタケシのアタマを【なでなで】し始めた。
「うっ、い、いっ痛たたたーーー」
「おっ、スマンスマン。ちょっとチカラ入れすぎた。ははは…」
…ホント、ばか力だな。このオッサンは!
一瞬ムカッときたが、それよりゴリ山さんがシンさんから何らかの相談を受けていたことはこれでハッキリした。手術の話を知っていたからだ。
タケシが予想外の【なでなで】を喰らっているのを見たリョウは、眉間にシワと口元をへの字にして一瞬身を固くした。その目はあきらかに、『自分に被害が来ませんように』と物語っていた・・・
※※つづく※※
タケシはこうなる事がよめていたから練習できたんだろうな。
クーっちはよくそんなに長いの書けるね。
すごいわぁ~~~
ゴリっちもホントはいい人なんだね∀ぁは♪