Nicotto Town


YUKIEのきまぐれ日和


もみじ~きみがくれたもの~(第2話)

 翌朝、明日香は朝食の席で、父に言おうかどうしようか迷っていた。
「今日も部活か?」
「うん」
「本当に、小学生の時から剣道ばかりだな。勉強もやっているんだかどうだか」
「勉強が大事だって言うのはわかっている!でも、私は剣道が好きなんだ!」
 
 明日香は立ち上がって、テーブルを(バンッ)と叩いた。父は目を丸くした。
「剣を振ることに集中したり、汗だくになって稽古するのは大変だけど、やりがいがあるって思えるんだ!」
 
 きっと父は何か言い返してくるって思っていた。が、父は何も言わず、ぽかんとした表情で黙り込んでいる。
 そんな表情を見たら、明日香の怒りは一気に冷めてしまった。
「り、理由はわからないけど・・・・・・、剣道これからも続けたい・・・・・・」
 
最後のほうはさっきよりもずっと小さい声になった。
 すると
「久しぶりだな・・・・・・お前がそんな風に自分の気持ちをはっきり口にしたのは」

「え?」
 
それだけ言うと、父は出かけた。


 
数日後、部屋で予習をしていた時だ。
(コンコン)
 
戸をノックする音が聞こえた。
「明日香、まだ起きているか」
「何?今予習しているんだけど」
「ちょっと話がある。居間へ来い」
「え?」
 
とりあえず居間へ行った。
 父はシフォンケーキとミルクティーをお盆に載せて運んできた。シフォンケーキは、明日香の好物である。
「今日時間があったから買ってきた。豊子さんにミルクティーを入れてもらったし、まあ、とりあえず食べろ」
「う、うん・・・・・・」
 
いつもなら(今はいらない)と言うところだが、このときは素直に従った。
「明日香、本当に剣道を続けたいか?」
「もちろん」
「そうか・・・・・・なら続けてみろ」
「え?」
「ただし、勉強と両立してな。話はそれだけだ」
 
そう言うと父は居間を出た。明日香は呆然とした。
(それって、認めてくれたってこと?)

 
その夜、あの少女が再び夢に現れた。
 明日香は何者なのかを聞きたかったが、その前にお礼を言おうと思った。
「あの、その、ありがとう。自分の気持ち、お父さんに言えたよ。どうやら、認めてくれたみたいだ」
「よかったねお姉ちゃん。あたしもうれしいよ!」
 
少女はにっこりと笑った。それを見たら、明日香は気持ちがほころぶのを感じて、ふっと笑った。
「ああっ、お姉ちゃん笑ったー!」
  
と、突然少女はうれしそうな顔をして明日香に抱きついてきた。驚いたが、明日香は少女の頭を軽く撫でた。なんだか和むのを感じた。
「お姉ちゃん、どうしていつもは笑わないの?いつもそうやって笑えばいいのに」
「え?いや、そう言われても・・・・・・」
「あのね、あたしが笑ったらおねえちゃん笑ったでしょ?お姉ちゃんが笑えばあたしももっと笑えるし、他の人だって笑えるよ」
「笑う、か・・・・・・」
 
他人に心を開かない明日香にとって、人前で笑うことなどほとんど無かった。それを改めて自覚した。
 
 
 
結局、その少女が何者なのか聞けないまま、また目が覚めてしまった。でも、目覚めは清々しい感じがした。

 朝食を食べた後、豊子にいつも通り
「いってきます」
 
と言った。すると、
「お嬢様、何かいいことでもあったんですか?」
「え?」
「あ、いえ、いつもと違って笑っていらっしゃるんで。あ、すいません!私ったら失礼なことを・・・・・・」
「ううん、別に。変ですか?私」
「とんでもございません。そんな風に笑っていただけると、私もうれしゅうございます」
 
 豊子は本当にうれしそうだった。なんだかむずがゆいような気持ちになった。


 放課後、いつものように体育館へ行こうとした時だった。倉庫の近くでなにやら騒ぎ声がした。
「なんだ?」
 
気になって行ってみると、なにやら3人の女子が1人の女子を囲んで何だかんだと言っている。耳を澄まして聞いてみると、
「ねぇ、だからさぁ、もっと金出せって!」
「この前は出してくれたじゃん」
 
よく見ると、囲まれているのは同じクラスの阿僧桃子だ。おとなしい子で、いじめられていると言う噂は、前々から明日香も聞いていた。
「お前らなにやってんだ!カツアゲなんてするんじゃない!」
 
明日香はすぐに止めに入った。
「あんだよ!おめぇが換わりに出すのかよ!」
 
1人が制服の襟をつかんできたが、明日香はその女を返り討ちにした。そうしたらその3人はそそくさと逃げていった。
「大丈夫?阿僧さん。」
「え、あ、ありがとうございます」
「別に。今度から金出せなんて言われたら、きっぱり断るんだぞ。でないと、また付け上がってくるだろうから」
 
明日香は久しぶりに人に話しかけた。その時無意識にだが、桃子に微笑んでいた。

アバター
2009/11/21 22:01
どんどん入り込んで読んでたわ~^^
アバター
2009/11/21 20:05
恭介さん:アドバイスありがとうございます(^^) 修正します。
アバター
2009/11/21 15:24
なかなか、面白いですね~。

ひとつだけきになった点が、逃げるときに颯爽ってあまり使わないような?気がします。そそくさとかが適当だとおもいました。
アバター
2009/11/21 06:27
楽しみにして読んでます
アバター
2009/11/20 11:48
marumokoさん:ありがとうございます(^^)読むのは気が向いたらでいいですよ。
アバター
2009/11/19 23:44
あ・後で読みに来る;;




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.