Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


以前書いた物語 いんこな日々-第14章-(中編)

14章 さよならの向こう側(中編)

目から溢れた涙が頬をつたった。
「ねぇ ねぇ」
誰かが呼ぶ声がきこえた。ん?
「もしもし、聞こえてる?」
ゴシゴシ腕で涙をぬぐって 目を開けてみて 思わず腰を抜かしそうになった。そこには かご越しに青い色のいんこな私が私をのぞきこんでいたからだ。
私が私を見てるって どういうことさ?
無意識に 頬に手をやる。涙流してたよね,私?いんこって 涙
なんて流したっけ???そこまで考えて 自分のからだに視線を落として またびっくりした。うおっ!人間だっ!いんこじゃないぞ!じゃ ここどこ?ぐるりとまわりを見回す。…ペットショップ?足元には ショルダーバッグとクリスマスケーキが置いてあって。クリスマスケーキとペットショップ…五秒の空白の後 私が元の姿で元の時間-クリスマスイブ 実家に帰省するバスに乗る前-に戻ったことが だんだん理解できてきた。
夢…夢を見ていたのか? 私はぼんやり自問した。
しかし その問いを否定するがごとく 目の前の青いセキセイ(私?)が 私にぎゃあぎゃあ しゃべりかけてきた。夢だというなら なんで私はセキセイの言葉がわかるのだ?夢だから理解できるのか?混乱してるよ、私…
「どうだった?楽しかった?」
目をキラキラさせて いんこが尋ねてきた。
「ってことは…あんたの仕業だったの?」
青いいんこは大きくうなずいた。
「だって いんこになってみたいって言ったでしょ?」
そう言われておぼろげながら 自分の発言を思い出した。そうだ、バイトはクビになるし、彼氏には捨てられるし、私すっかり気持ちがクサクサしていたのだっけ。
「だから 私の未来の時間をちょっと貸してあげたってわけ」
ちょっと得意げないんこの態度に 私はちょっとムカッとした。
「どうして そんなことが出来たわけ?今まで あんた どうしていたの?私のからだに入っていたの?」
矢継ぎ早に私は質問をとばした。いんこは クスクス笑いながら答えた。
「なんで 人間のからだなんかに入らなきゃならないの?からだの持ち主でさえ 嫌がってたってのに?」
非常にするどい指摘に 私は反論に グッとつまってしまった。いんこは続けた。
「私がどこにいたかは秘密だよ」
そう言うとちょっと間を置いて いんこはキラキラした瞳で私を見つめた。
「今日は クリスマスイブだから。クリスマスプレゼントって思えばいいんじゃないの?」
クリスマスイブだから…?私はぼんやりと いんこをながめた。まだ 状況を理解しかねておったのだ。

と、ここまでは高飛車だったいんこが 突然モジモジと下を向いた。それから 顔を上げると決心して私に言った。
「で。相談なんだけど。これって運命の出会いって呼べる状況だと思わない?」
「運命の出会い?」
いんこはまた モジモジしながら でも ようやく言葉を続けた。
「だから、ね、私の飼い主になってもらえない…かな?」
ほんとにオズオズといんこは 私の顔を伺った。平気そうな顔で頭のフケとばす態度と裏腹に 彼女は まだ見ぬ飼い主を待ちつづけていた、というのか?
クリスマスイブ、外のイルミネーションを眺めながら閉店時間が迫る店内でいんこは 自分の前に立ち止まった女が「いんこになりたい」とつぶやいたのを どんな気持ちで聞いていたんだろう?
瞬時にその考えが 私の頭をよぎった。
いんこの気持ちが せつなくて 愛らしかった。今すぐ彼女を手のひらに包み込んでしまいたくなった。
「運命の出会い」とよくいうけれど 今まさしく その「運命」と私は出会ったのだ。
こいつを連れて行こう、と私は決心した。
一晩バスに揺られるが成鳥なら なんとか 我慢してくれるだろう。必要なのは 移動用のキャリーだな。
「ちょっと待っていてね」
私は そういんこに言い残すと 出口付近のレジにいる店員の元に駆け寄った。
「すみません、セキセイ用のキャリーありませんか?」 
「あ ちょっと待ってくださいね 裏にあるはずなんで」
そういうと 店員は店の奥に姿を消した。
私はいんこのかごの前に戻った。期待で目をキラキラさせていんこは待ちかまえていた。
「連れて行ってもらえるのっ?」
私は ニコニコして大きくうなずこう、とした。
その時。店の入り口が開く音がした。
「うひゃ~ 閉店前に間に合ったぁ!」
転がり込んできた女の人が言った。それは聞き覚えのある声だった。私は 反射的に振りかえった。そこにいたのは「飼い主」だった。
「な…」
事態は私の理解の範疇を超えていた。声が出ない…。

(つづく)

アバター
2009/11/24 20:58
Σ(゚∀゚*) これってりょうちゃんが飼われる時に戻ったのか
どうなっちゃうんだろう
意外な展開
アバター
2009/11/22 21:03
こんばんは!

えーっ!?まさかの展開ですΣ(◎_◎)
今までの時間はセキセイさんのステキな魔法だったんですね❤
そしてまた、新たな出会いが…目が離せません♪
アバター
2009/11/22 16:26
小説、たくさん書いていらっしゃるんですね。
読んでて面白いです。
アバター
2009/11/22 08:27
いっきに物語りが反転!ち~っとも飽きさせない展開だ。時間移動!LOSTっぽく。2話続けてアップもありがとうございます!



月別アーカイブ

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.