電車に乗っていると、乗り合わせた人が読んでいる本が気になる。
チラチラとページをめくる人の方を見て、何を読んでいるかうかがったりしてしまう。
内容が見えれば読んだ本ならそれとわかるし、そうでなくてもアレコレ推理してしまう。
紙の色、小口の様子（化粧裁ちしてあるかどうか）、サイズ、等々で出版社が推測できる。
栞がついた文庫は新刊なら新潮、上部小口がギザギザしてればハヤカワとか（が多かったけど、ハヤカワの文庫はサイズ変更したので新刊だとどうなんだろう？）
大抵は文庫本だが、単行本だとその造本なんかも手掛かりだ。

もっとも、わずかに見える手がかりから推測しているので、勘違いも少なくない。
クラスメイトの読んでいる本に『イーダ』という名前があったので
「松谷みよ子好き?」
と声をかけて、ヘンな顔をされたこともある。
松谷みよ子の『ふたりのイーダ』を読んだことがある人ならわかると思う、読まれていたのはアンデルセンの「イーダちゃんの花」だった。
（松谷みよ子の『ふたりのイーダ』に登場するゆう子は、「イーダちゃんの花」が大好きなことと「イーダ」と言ってへんな顔をすること、そのふたつからイーダと呼ばれる）
『あちゃ、由来の方か……』と気付いたときは後の祭り。
場違いになってしまった言葉の寒さったら……

好きな本、読んだことのある本を手にしている人を見ると、同士とすれ違ったような気がしてなんだかうれしい。
見知らぬ人との意外な一致、ワクワクしません？