ジングル・キャット~前編~
- カテゴリ:自作小説
- 2009/12/05 21:24:31
ここはとあるプロテスタントの教会。そこに、一人の男性がやってきた。
「フルムーンの白石です。ご予約いただいたケーキお届けに参りました。」
やってきたのは洋菓子店『フルムーン』のオーナーだ。
毎年この教会では、クリスマスのお楽しみパーティーで、子供たちにケーキを振舞っている。
教会の牧師が彼を迎えた。
「毎年ありがとうございます。白石さんのところのケーキ、子供たちは毎年楽しみにしているもので。」
「いえいえ。毎年私のケーキを子供たちが楽しみにしているのは、私にとってもうれしいことです。」
「ハーイ、みなさん。ケーキですよ~。」
『わーい!!!』
子供たちは、牧師が並べたブッシュ・ド・ノエルをおいしそうに食べた。
「クリスマスはにぎやかですね。」
「教会もこの日はにぎわいますね。子供たちのお芝居ですとか、お楽しみ会ですとか。」
「子供たちの笑顔を見るのが何よりの楽しみですよ、私は」
「そうですね・・・・・・。」
そうは言いながらも、牧師が少しだけ悲しそうな顔をしているのに、シスターは気がついていた。
「マリー・ジョゼフ。どうかしましたか?」
「あっ、いえ。」
マリー・ジョゼフは知っていた。
牧師は1年前に事故で家族を亡くしてしまった。
それ以来、とても明るかった牧師は、時折少し影を落とすようになってしまったのだ。
「さて、今日の仕事はもう終わりです。そろそろ帰りましょうか。」
「はい。正一さん(牧師の本名)もお気をつけて。」
正一は、教会の近くの自宅へと帰っていった。
「おや・・・・・・?まただ。やっぱり気のせいではなかったのか。」
正一は家に帰ってきて、異変に気がついた。
行くときはケースに入れておいたスリッパが一足きちんと並んでいる。まるで自分が履くためのものが用意されているようだ。
他にも、少し散らかっていた部屋がとても綺麗に片付いていたり、朝使って水につけておいた食器がもう洗い終えていたり。それに、自分は使っていない踏み台が使われた形跡がある。踏み台は生前、孫が使っていたものだ。
この異変は一昨日からだった。一昨日は、スリッパが玄関に並べてあっただけなので、自分がしまい忘れただけだろうと思っていた。
しかし、昨日はスリッパだけでなく、部屋の中が少しだけ片付いていた。それで少しおかしいとは思ったが、あまりに気に留めてはいなかった。
さらに今日帰ってきたらこの通り。
これはさすがに気のせいではないと思った。
「一体誰なんだろう?ここまでしてくれたのは。もしかして、神から僕へのクリスマスプレゼントなのだろうか?」
そんなことを言いながら、夕飯を食べて、食器洗いもさっさと済ませた。
おなかがいっぱいになったせいか、ソファーに座っていたら、眠くなってきた。このままちょっと眠ろうかと目をつぶったときだった。膝にの上何かがかかるのを感じた。
「ん?あれ?」
目を開いて見ると、ひざ掛けが自分の足にかけてあった。
正一は思った。
(やはり、この家には何かがいる・・・・・・?)
なにか・・・幸せな予感?ステキな予感を感じさせますねっ。
たのしみ~^^
なんか楽しいですね。
何がいるんだろう・・・?