Nicotto Town


まぷこのぶろぐ・・・か?


【おでかけ】(6)

「…お疲れ様。ずいぶん時間がかかったね?」
 先に調書を取り終えていた青年がドアの外で待っていた。
「あ…書類の見直しに、手間取って。あと、現場までたどったルートの確認に、意外と時間が」
「それだったら俺に連れられて歩いたから良く判らない、でよかったんじゃ?」
「ああ、そうですね。…でも、どこから彼らが後をつけてきたのか、というのは、覚えてらっしゃいます?」
「んー…それを言われると自信が無いなあ」
 青年が腕組みをして首を捻る。
「まあいい。それより、当初の約束を果たさないとね。昼をだいぶ過ぎてしまったから、店じまいしちゃったところもあるかもしれないけど」
 そう言いながら青年は、少女を促して詰所を出た。

「どうしたんですか?地図を睨みつけて」
「いや……まさか、とは思うんだけどな。……今日捕まった奴ら、ほとんどが、殿下達の通ったルートで捕まってるんだよな」
「それは…殿下の周辺には、警護がつかず離れずしてるから、…他よりは見つかりやすいのでは?」
「それにしても、あの数は異常だぞ?」
 警備隊長の机の上に積み上げられている報告書の数は、午後を回ったばかりだというのに、既に普通の一日分の三倍はある。今日休みを取っている隊長が、明日出てきたら、どんなかをするか、見ものだ。
「だったら……いっそのこと手の空いた者は殿下の後をついて回るようにしてみてはいかがですか?」
「バカ言え。そういう無粋なまねは近衛の仕事と相場が決まってるだろうが」
「…そういえば、殿下が直接手を出されたという事は……近衛の連中はどうしてたんでしょうね?」
「さあね。こっちと同じように忙しい思いをしてるのかもな」

 そのころ、青年と少女は、食べ物屋台の売り上げに甚く貢献していた。既に一軒、豆菓子の店を(残りが少なかったとはいえ)売り切れ閉店にした少女は、戦利品を片手に、次の店を物色していた。
 そして一軒の煮込み料理の屋台の前で鼻をひくつかせて足を止め、傍らの青年を見上げる。小さく溜め息をついた青年がうなずくのを見て、少女が店主に話しかける。
「小母さん、ここのお勧めは何?」「じゃあそれちょうだい。二人前」「ありがとう。…ちょこっとおまけしてくれると嬉しいな」
 同じセリフを、既に七軒の店で繰り返している。
「……君の胃袋は、異空間にでもつながっているのか?」
 二軒目までは少女の食事につきあった青年が、うんざりしたように言う。ここまですべての店で二人分注文しているが、三軒目からは、味見で一口もらう以外は、すべて少女が二人前平らげている。
「……ああ、そういう手には気付きませんでした。今度から、食べる時間が無い時は、それ使わせてもらおう」
「という事は、だ。あれ全部その腹に入ってるんだな?少しは重くなったか?」
 青年がおもむろに立ち上がり、少女の後ろにまわって、椅子代わりの樽の上から、ひょいっと持ち上げた。
「……あまり増えてないようだが?」
「石食べてる訳じゃありませんから。……下ろしてください」
 匙を握りしめたまま、少女が文句を言う。
「食べ物屋の店先で口にしていい言葉じゃないと思うなあ。「石食べてる」なんて」
 青年が少女を樽に座らせながらからかうように言う。
「誰が言わせてるんですか。食べ物の価値は重さじゃありません。……あ」
 青年が吹き出す。そしてそのままテーブルに手をつく。
「…うん。そう、だね。…ごめん。……ゆっくり召し上がれ」
 そう言って青年は少女から顔をそむけて俯くが、その肩が細かく震えている。
「……言い間違えました。「食べたものの重さがそのまま体重になる訳じゃない」と「人間の価値は体重じゃない」です」
「…うん、解説しなくても…判った、から、…ごゆっくり……」
 立ったまま忍び笑いする青年の横で、少女は眉間にしわを寄せたまま食事を続けた。
「ごちそうさま。おいしゅうございました」
 眉間にしわを寄せたまま、少女が匙を置いた。そのしわを指先でつつきながら、ようやく笑いを収めて座り直した青年が少女をからかう。
「そんな顔してたら、本当においしいと思ってるか疑わしいぞ?」
「…ちゃんとおいしかったですよ。相席の方が失礼でなかったら、もっとおいしかったかと思いますが」
「失言を笑ったのは、謝る。でも、それだけで失礼って言われたんじゃ、立つ瀬がないなあ」
「…では、「失礼」は撤回します」


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ああああああ……最後まで入らなかったあ。
やっとデートっぽい展開になったと思ったのに……じゃあ、もうちょっと伸ばそう。

#日記広場:自作小説

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2009/12/10 19:47
入らなかったということは
もっと書かれたものがあるということですねw
ふふふ
思う存分書いてください
楽しみにしています



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