サンタクロースの秘密~前編~
- カテゴリ:自作小説
- 2009/12/13 00:40:14
「ねぇ、サンタさんはうちには来ないの?」
「どうしてそんなことを言うんだ?」
「友達が、私の家は仏教で、お寺だから、サンタさんは来ないんだって。」
「里奈子、確かにクリスマスはキリスト教の行事だけど、里奈子のところにもきっと来るぞ。」
「本当に?」
「ああ。」
そんな会話をお父さんとしていたのは何年前だったろうか。今年もクリスマスイブがやってきた。
「姉ちゃん、ケーキそろそろ買いに行く?」
「いいよ。宗栄が適当なの選んできて。」
「どうしたんだ?いつもなら自分が好きなの選ぶって率先して買いに行くのに。」
「別に。ただ今はそんな気分になれないだけ。」
今の私は、とてもクリスマスの雰囲気を楽むような気持ちにはなれないのだ。
「姉ちゃん。本当にどうしたんだよ?なんか悩みがあるなら俺が聞くよ。」
「本当になんでもないよ。心配しなくてもいいよ。」
「話したくないのかよ。姉ちゃん、よく一人で抱え込む癖があるから、無理しないで吐き出した方がいいと思うぞ。」
宗栄の気持ちはありがたいが、やはり打ち明けることはできない。自業自得だし、打ち明けたところで心配をかけるだけだ。
「・・・・・・姉ちゃん、サンタクロースって信じているか?」
「は?なによいきなり。」
「俺はサンタクロースに会ったことがあるから、いると思うぞ。」
「そう言えば、あんた昔から(俺サンタクロースに勇気をもらったんだ)なんて言ってたわね。」
宗栄はなぜかサンタクロースを信じているようだ。昔からそう言っている。
あれは、小学生のときだった。
当時気弱だった宗栄は、ひどいいじめを受けていた時期があった。
私が助けたことも何度かあったが、それでかえって「甘えん坊」とか「お姉さんがいないと何にもできないやつ」とつけ上がる子もいて、なかなか収まらなかった。
だが、その年のクリスマスの後、宗栄はいじめっ子に自分から立ち向かうようになっていた。
本人曰く
「クリスマスの夜に、サンタクロースが自分に勇気をくれたんだ」
とのこと。
サンタさんがお守りとしてくれたという、キーホルダーも見せてくれた。
けれど、お守りをくれたのは父方の伯父さんだ。どうして、サンタクロースの贈り物だといっていたんだろう?
「もしかしたらこの状況だと、今度は姉ちゃんの所に来るかもな。そう、サンタクロースのお兄さんが。」
「はぁ~?」
普通ならサンタクロースはおじいさんだ。宗栄の言っていることは、意味がさっぱりわからなかった。
その夜、明日のクリスマスパーティーの準備をした後、私は自分の部屋でいつものように眠っていた。
(シャンシャンシャン)
何処からともなく、鈴の音色が聞こえてきた。その音で目が覚めた。
「なんだろう?外からかな?」
私は鈴の音色に導かれるかのように、パジャマのまま外へ出ようとした。
だが、外は雪が降っていて寒かったので、上着を一枚羽織って出た。
外で出ると、空から何かがこっちに向かっているのが見えた。
そのシルエットは、この時期に売られている絵本やグッズでよく描かれているものだった。
「え?え?え?」
(シャンシャンシャンシャンシャン)
鈴の音がどんどん大きくなっていき、どんどん近づいてきてその姿がはっきり捉えられるようになった。
首に鈴をつけたトナカイ、そのトナカイが引いているのはソリ、ソリに乗っているのは赤い服を着た白ヒゲの人。
「メリークリスマス!」
「え・・・・・・えええええええええ!?」
目の前の光景に私は驚いた。
目の前にいるのは、どこからどう見てもサンタクロースだ。
「驚かせてしまいましたね、里奈子さん。」
「あ、あの・・・・・・?」
「今、あなたは悩み事があるのですね。どうですか?今日は一つ、それを紛らわすために私とデートするというのは。」
「え?え?」
わけもわからないまま私はソリに乗せられ、ソリは空を飛び始めた。
Xmas前に ひとつ楽しみが増えましたよ~^^
また読ませてくださいね(^-^)