Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


以前書いた物語「いんこな日々」続編

クリスマスの輪廻-その1-

クリスマスの時期になると思い出す。彼氏に振られ、バイトの人間関係にも嫌気がさして、クリスマスにケーキ買って故郷に帰ろうとしたあの日。長距離バスの出発時刻までに待ち時間に出会ったペットショップのセキセイインコ。そして、あの不思議な体験。私がいんこになって、知らない女の人に飼われ、いんことしての一生を過ごした数年の時間。そして、気がついたら、ペットショップのセキセイインコの前に戻っていた。運命を感じた、そのセキセイを連れて行こうとした、その時。私がいんことして数年をともに過ごした彼女が目の前にいたセキセイを連れて行ったのだ。輪廻という言葉を初めて信じた。あのセキセイは私がいんことして過ごした数年と同じ体験をしたのだろうか?
あの日から十回目のクリスマス。私は、この街で生きている。ひょっとしたら、飼い主だった彼女とどこかですれ違わないかと思ったけれど、残念ながら期待は空振りのままだった。
そして私はあの体験の後、セキセイのぴーを飼い、ぴーは半年前、空に旅立っていった。ぴーは私がいんこだったことは、今ひとつ理解できなかった、何度か話はしてみたんだけど、不思議そうに首をかしげて、しまいには飽きて私の唇をガブリと齧って話しを中断させちゃたっけ。
ぴーがいなくなってまた一人ぽっちのクリスマスが巡ってきた。
今日、街中を約束もないのにぶらついているのは、ひょっとして、もしかして、もしかするかもしれないぞ、と思ったからだ。
もし今度出会えたら。今度は私といっしょに過ごして欲しくて。
クリスマスの魔法がかかってる今日なら、そんな不可能も可能になる、そんな気がしてならないから。
そして、私は半年ぶりに、あのセキセイと出会い、ぴーと出会い、ぴーのための餌を買うために通っていたペットショップの前に来た。
「え?うそ…」
ペットショップは牛丼屋さんになっていた。ロマンティックな気分もぶち壊れである。それでも悔しいのでこのまま帰れない、とつい店内に入り、ついつい
「牛丼。並で…」
咄嗟に頼んでしまう。独り身でクリスマスに牛丼かよ~、と自分に突っ込みを入れてしまい、ドツボにはまる。ほどなく店員さんが
「お待たせしました、牛丼並一丁です~」
と牛丼を渡してくれた。
「あの・・・」
「はい?何か?」
「あの、ここに以前あったペットショップご存知ないでしょうか?」
「ペットショップ…ですか?申し訳ありません。ちょっとわからないです」
「そうですか、あ、変なこときいてごめんなさいね」
はぁ…小さなため息一つ。クリスマスの魔法は今の私にはふりそそがないことを実感しつつ、私は牛丼をボソボソ食べ始めた。魔法のないクリスマスは独りぼっちの身にはきついものがある。やっぱり実家に帰ればよかったかな。
「あの~」
がっくり肩を落として食べている私に先ほどの店員さんが話しかけてきた。
「ペットショップをお探しなんですか?」
「え…ん~と」
口ごもる私に気がつかず、店員さんが一生懸命話しかけてきた。
「さしでがましいですが、この通りを一本入ったところに最近オープンしたワンワンショップがあるのを思い出しまして」
あー、犬の店かぁ、私の探しているのはセキセイインコだしなぁ。心の中で再びつぶやくも、ニコニコニコ。店員さんの精一杯の笑みに言葉を失う。
「そうですか、ありがとうございます」
そう返すしかなかった。まぁ世間一般にはペットといえば犬か猫が相場だもんなぁ。なんだか、気分がますますどんよりしてくる。変にクリスマスに期待しすぎの自分が悪いのだ。いい大人がクリスマスの魔法とか、夢見る乙女な年でもないじゃろが!
牛丼屋さんを出ると外気の寒さがぐっと身にしみた。
「さて、どうするか?」
約束があるわけではないし。セキセイと出会う予定はあくまでも、自分勝手な期待でしかなかった。私の目指したペットショップが移転したのか閉店したのかはわからないけれど、ここにある現実は牛丼屋さんであるということ、ただそれだけ。帰宅しようか?と思ったが、振り返ると店内から店員さんがこちらを見ていて、一瞬ぎょっとする。ニコニコしながら指さしている。ペットショップのある方向を教えてくれているのだ。親切な店員さんの気持ちを無視することもできなくて、店員さんに軽く会釈するとペットショップだという方向に歩き出した。
そのショップはすぐに見つかった。予想より大きな店である。店内はお客さんがけっこう入っていて店員さんも忙しそうに走りまわっている。迷ったけれど、外にいるのも寒いので、店内に足を踏み入れた。

店内に入るとすぐに私は一番近くにいた店員さんに場違いな言葉を投げかけた。
「セキセイインコいますか?」
すると店員さんがにっこり笑ってこう言ったのだ。
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
クリスマスの魔法だ!私は吸い寄せられるようにその店員さんの後をついていった。

(つづく)

アバター
2009/12/25 09:52
エッどういうことなんだろう・・・
何があるんだろう・・・
アバター
2009/12/23 19:50
おお~、クリスマスの魔法たのしみだ~わくわく^^
アバター
2009/12/23 14:26
こんにちは✿

あのあとりょうちゃんにも新しい出会いと別れがあったのですね!!
そしてまた、魔法がらみの何かが起こる予感…楽しみです❤
アバター
2009/12/23 08:09
クリスマスってそんなにロマンを求めるのかと思いながらも、そうとるか、訝しいととるか、引き込まれます。



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