Nicotto Town


まぷこのぶろぐ・・・か?


「契約の龍」(139)

 「計画の半分しか話さないで、協力を得ようというのは、ちょっと虫が良すぎないかね?」
 厨房の一隅で、夜食のパイ包みをほおばっていたクリスの前に立ったクラウディアは、腰に手を当てて、クリスを見下ろしながら、いきなりそう言い放った。
 「…ええとぉ……計画って………どの?」
 口の中のパイを、スープで飲み下したクリスが、上目遣いに祖母を見てそう訊き返す。
 「どの、って…そんなにいろいろ企んでるのかね?おまえは」
 「企むって……人聞きの悪い。悪事でも働いてるかのように」
 クリスが軽くふくれてみせる。どうもこの人の前ではいつもこんな表情をしているように思われるが、気のせいだろうか?
 「何でもいいから、キリキリ白状おし。どんな大それたことを目論んでるんだい?」
 「そんな、大それたことなんて」
 口籠りながら、残りのパイを平らげる。
 「…ええと…最終的な目標は…「龍」との契約を解除する事、だけど…」
 「…それのどこが大それてないって?」
 クラウディアが首を振って呆れたように言う。
 「そんな事が易々とできるようなら、あんたの母親がとっくにやってるだろうさ」
 「今だから、できる、とは思わない?「金瞳」の数がこれだけ減るっていう事は、幻獣の方も解除したいのかもしれないし」
 祖母が孫の顔をまじまじと見つめる。
 「それで、親父さんの方の遮蔽をさせたのかい?あちら側から見える「金瞳」の数を減らそうとして?」
 「だって…死ぬまで待つなんてできないし……そもそも、死んでほしくない」
 「…でもそれは…あんたの一存で決めていい事じゃないだろ?」
 「陛下には……相談した。できるかどうかは、判らない、という前提で、だけど」
 「ふうん……それで、なんだって?」
 「……人間の方の説得は、自分の仕事だろうな、……って。…理論武装の方はもう済んでるのだけど、なかなか踏ん切りがつかない、とも言ってた。……王位継承の条件から、「金瞳」をはずすための」
 「準備の方はできていた、って事?…それは、「金瞳」の数が減り始めたから?」
 「理由は、教えてくれなかったし、聞かなかった。…ただ、私の出てくるタイミングが悪い、って」
 「…じゃあ、クリストファーも相当に間が悪かろうね。あの子を王位に就けたいがために持ち出したみたいに聞こえかねない」
 「…でも、クレメンス大公の「金瞳」は、残る、と思う。現在王太子の位にある方が優先されるのでは?」
 「クレメンス大公は、正式に立太子している訳ではない。それに近い処遇を受けているようだが」
 話題の主が現れた。
 「…どういう事?」
 クリスがクリストファーを睨みつける。
 「どういうも何も……今自分で「クレメンス大公」って呼んだだろう?「王太子殿下」じゃなくて」
 「…それが何か?」
 その場にいた全員が嘆息した。
 仕方がないので説明する。
 「……クリス。王位・王太子位と、他の爵位は兼任できない。もちろん大公位も例外ではない。ゲオルギウス・ゲオルギアを名乗る時には、他の位は返上させられる」
 「……ええと…それってもしかして、常識?」
 「大公位と領地の返上、までは、常識とは言えないかもしれないけど、「ゲオルギウス・ゲオルギア」を名乗れるのは、国王と王太子だ、というのは常識だと思う」
 「もう、こうなると、意図的に教えなかったとしか思えないよねえ」
 「………私にその辺の知識が欠けてるのは、十分に認識してるから、いいんだ。それを非難しに来た訳じゃないんでしょ」
 クリスが不機嫌に言い返す。
 「…ああ、そうだったね。…ところで、クリストファーは何の用事でここに?」
 「職員が引き揚げるっていうんで、資料あさりができなくなって。で、そろそろ寝もうかと思ったんだけど……部屋が判らない」
 「…方向音痴だっけ?あんた」
 「そんな事は無い……と思ってたんだけど。自信なくなってきたな。この調子じゃ」
 そう言って、肩を竦める。
 「まあ、広いし判りにくいのは確かだけど。…でも、どうやってここに辿り着いたんだね?」
 「そりゃあ……地道に尋ね人をして、だけど」
 尋ね人。誰を、何と言って訊いて回ったのか、知りたいような、知りたくないような。
 だが、それよりも。
 「…その顔をさらして回ったのかい?相手は変な顔しなかった?」
 こんな時間に国王をざっと二十年ほど若返らせた顔をした者が、人を尋ね歩いたら……真昼間でないだけいくらかましだろうが、ちょっとした騒ぎになりかねない。
 「顔?………どうだったかな?」
 「……まあいいわ。まだ降りかかっても来てない火の粉の心配をしても仕方ないしね」
 クラウディアの言う「火の粉」と言うのがどんな類のものかは想像がつかないでもない。が、降りかかるのは、どうせクリストファーに、だろう。それに、もう夜も更けているし、何か事を起こすとしても、朝になってからだろう。

#日記広場:自作小説

アバター
2009/12/31 02:59
設定資料、私もほしいです。
私自身もおおまかなプロットしか立てないで書いているので、時々人の名前を忘れて過去ログ見ながら書いているので…

登場人物(名前しか出ていない人も含めて)の年齢のあたりは、深く追求すると、たぶんどこかでぼろが出ます。
アバター
2009/12/29 22:02
お正月に初めからちゃんと読みます

設定資料が欲しいです
年表、人名、用語、国内組織、地図(国、城、街、学園)魔法の種類等
無茶か/(°ё°)\



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